日本医師会も「忠告」!加熱式たばこは「害を低減」するのか?

 まずもっとも脅威なのは、「医療業界からの反発」だ。

『加熱式たばこを巡って“炎上”続出、「水蒸気だから迷惑かけない」の大誤解』(22年10月13日)の中で、加熱式たばこに詳しい、国立がん研究センター・データサイエンス研究部の片野田耕太部長に解説していただいたが、「加熱式たばこ」もたばこ葉を熱している以上、有害物質は出る。そして、周囲の人間は「受動喫煙リスク」にさらされるという。

「実は紙巻きたばこの有害物質は異常に高い数値なので、それが加熱式たばこで大幅に減っても、日常生活でありえないレベルの有害物質が含まれていることは変わりありません。例えば、居酒屋で加熱式たばこを吸うということは、店内にいる全員で発がん物質を“共有”しているようなものなのです」(片野田氏)

 つまり、加熱式たばこでハーム(害)のリダクション(低減)というのはかなり眉つばな話だというのだ。実際、海外で「紙巻きたばこからのハームリダクション」という取り組みの中で用いられるのはもっぱら「電子たばこ」だ。こちらは加熱式たばこのように「たばこの葉」は入っておらず、抽出したニコチンを吸引するだけなので有害物質が出ない。そのため、イギリスでは、日本の厚労省にあたるナショナル・ヘルス・サービスが、禁煙治療に「電子たばこ」を推奨している。

 日本の医療政策に大きな影響力を持つ日本医師会も「たばこハームリダクション」に否定的だ。昨年2月に開催した「知ってほしい!新型たばこの危険性」というシンポジウムにも参加した黒瀬巌常任理事は、こう述べた。

「一部で加熱式たばこなどに切り替えることで、禁煙に繋がっていくんだという考えの方がいらっしゃるようですが、私たちとしては『喫煙の種類を変える』ということと、『喫煙を止める』という行動はまったく違うと考えています。そもそも、紙巻きたばこよりも害が低減されるからいいんだ、という話ではありません。例えば、これまで時速200キロで飛ばしていたけれど、時速150キロに減速したので安全運転だなんて話は通じませんよね」