人生はいつ、何が起きるかわかりません。いざというとき後悔しないよう、結婚記念日などの節目で、これまでの感謝を伝えることも大事です。

 直接、伝えるのが照れくさければ、手紙を書いてみるのもいいでしょう。ここでのポイントは、下手でもいいので必ず「手書き」で書くこと。気持ちが伝わればもちろん、自律神経のコンディションも整います。

 医師の仕事は、つねに死と隣り合わせです。私はこれまで何百人という人の死に立ち会ってきましたが、つくづく思うのは死は平等だということです。

 どんな人でもいつかは必ず死がおとずれます。死から逃れることはできません。

 そして、死んで残るのは骨と灰だけです。どれだけ成功しようと、どれだけお金や名誉を得ようと変わりはありません。

 だから、人生は「プラマイゼロ」だと思っています。人は生まれて、最後はゼロで死んでいく。限りある人生をワクワクして生きるには、まずはこのシビアな事実に向き合う必要があると思います。

 やる気が起こらない、動きたくないといって、ダラダラ、ゴロゴロしている人は、もしかしてこの事実を忘れているのではないでしょうか。死なんて自分には訪れないと思っているのではないでしょうか。

書影『老後をやめる 自律神経を整えて生涯現役』(朝日新聞出版・朝日新書)『老後をやめる 自律神経を整えて生涯現役』(朝日新聞出版・朝日新書)
小林弘幸 著

 私は60歳を超えたころから、「一日一日が勝負だ」と思うようになりました。

 自分に残された時間はそれほど多くない。だから、今日という日を全力で生きる。いつ死んでも後悔しないように、やりたいことをやり尽くす。

 そう心に決めたら、ダラダラ、ゴロゴロしている暇なんてありません。今この瞬間も、死へ向かって確実に進んでいるのですから。

「メメント・モリ」という言葉があります。「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」という意味のラテン語です。

 この言葉をいつも頭のどこかに置いて、死を迎えるその日まで、めいっぱい人生を謳歌してください。