戦略思考ができる人は使ってる、「乱気流の時代」に大事なフレームワークとは?写真はイメージです Photo:PIXTA

先の見えない時代にこそ参照すべきはドラッカー

 日本も世界も、予測不能な出来事であふれている。新型コロナウイルスのパンデミックから始まり、ウクライナ紛争、ガザ紛争、円安、インフレ、気候変動や地震による災害の増加、台湾海峡危機、北朝鮮のミサイル問題、AIとデータ駆動型社会の本格的到来、アメリカ社会の分断、そしてタレコミ情報をもとにした週刊誌の異常な世論喚起力(密告社会の誕生)……。一つ一つが社会の基盤を揺るがす事件である。これらが互いに関係しながら、一気に起こっているわけだから、よほど注意しなければ、自分たちの立ち位置がわからなくなってしまう。

 このような時代に直面したときは、「困った時のドラッカー」に頼ってみよう。ビジネスパーソンにとって、常に有効な対処法の一つになる。『乱気流の時代の経営』(P.F.ドラッカー著。初出は1980年だが、1996年に邦訳の新版『乱気流時代の経営:新訳』がある)において、ドラッカーは先の見えない時代の計画について、次のような警告を発している。

「これまでの25年ないし30年においては、プランニングが大きな役割を果たしてきた。急激な変化の心配はなく、趨勢の継続をかなり正確に予期できた。今日を明日に投影すればよかった。(中略)しかるに今日最も確実にいえることは、これからは、基本的な構造を根本から覆すようなまったく新しい種類の出来事が起こるということである。

 新しい種類の出来事については、プランニングは無効である。

 しかし予期することはできる。あるいは、それを利用すべく態勢を整えておくことはできる。(中略)明日のための戦略を立てておくことはできる」

 この本が出版されたのは1980年だが、今のほうが明らかに乱気流の時代と呼ぶにふさわしい。特に重要なのは最後の一文であろう。「乱気流の時代において確固たるプランニングは無理だが、予期はできるし、備えておくことはできる」というのである。

 では、具体的に、どのように予期し、どう備えておけば良いのか。