あわや脱線…山形新幹線「つばさ」がまたオーバーラン、“約1年で2度のトラブル”なぜ大問題なのか?Photo:PIXTA

東京に雪が降る日には何かが起こる――。桜田門外の変や2・26事件を論じようというわけではない。東京の積雪は過去10年で10回程度、単に雪に慣れていない人々が普段とは違う行動をするためトラブルが起こりやすいというだけだ。6日に起きた山形新幹線「つばさ121号」のオーバーランというトラブルも果たして、そんな背景があるのだろうか。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

鉄道の安全設計を
根底から覆す可能性も

 東京が今年2回目の積雪を記録した3月6日午前7時30分頃、山形新幹線「つばさ121号」が途中停車駅の郡山駅で500メートルもの大オーバーランを起こし、列車移動や設備安全確認のため、東北新幹線東京~盛岡間が2時間以上運転を見合わせるというトラブルが発生した。

 当該列車は東京駅を午前6時12分に出発し、上野、大宮、宇都宮、郡山、福島を経て、山形・新庄方面に直通する下り1番列車だった。JR東日本によれば、郡山駅までの走行、停車に異常はなかったが、郡山駅停車時にブレーキが正常に作動しなかったという。

 鉄道の安全は「ひとつの区間にはひとつの列車しか入れない」ことと「区間に応じた制限速度を守る」ことで保たれており、高速走行する新幹線では、列車の走行位置と速度を常時監視し、自動的にブレーキをかけるATC(自動列車制御装置)が導入されている。

 東北新幹線のATCは、現在の走行速度から停車駅の定位置に停止するブレーキのパターンを生成し、これに従って速度を調整。最後の停止操作は運転士が行っているが、ブレーキ操作の遅れや、線路が凍って車輪が滑るなどした場合は、安全上、絶対超えてはならない地点の手前で強制的に停車する。

 こうした最後の段階のブレーキで、速度を落としきれずに数十メートル程度過走する事例はままあるが、500メートルを超える過走となれば、駅進入時点でATCの減速が十分にできておらず、制限速度を超過する状態でホームに進入し、そのまま通り過ぎた格好だろう。

 郡山駅は「はやぶさ」など通過列車用の本線の他、2面4線のホームがあり、下り「つばさ号」は本線から分岐した12番線に発着する。マスコミの取材に対して乗客は「通過時にかなりの揺れがあった」と証言していることから、制限速度を大幅に超過してポイント(分岐器)を通過したとみられ、最悪の場合、脱線の可能性もあった。

 なおJR東日本新幹線統括本部に当該ポイントの制限速度を尋ねたところ「公開していない」として回答は得られなかった。当該列車が実際に走行した速度は解析中というのは仕方ないとしても、制限速度すら回答できないというのは誠実さに欠ける対応であり、利用者の不信をまねく行為だと指摘しておく。

 今回のトラブルについて同社は、雪の影響も含めて原因を調査していると説明するが、これが単なる「オーバーラン」という事態にとどまらないのは、鉄道の安全設計を根底から覆す可能性がある事象からだ。