有権者の3分の2は
トランプ氏に投票しない
トランプ氏にとっての今後の課題は共和党の穏健派と無党派層の支持をいかに増やすかだが、ここに興味深い調査結果がある。
AP通信とシカゴ大学全米世論調査センター(NORC)が2023年8月に全ての有権者を対象に実施した世論調査では、「トランプ氏を好意的にみている」と答えた人はわずか35%だった。そして「トランプ氏が共和党の指名候補になったら、投票するか」との問いに「ノー」と答えた人が「絶対に」「おそらく」を含め63%に上った。
この調査では、バイデン氏の支持率も現職大統領としては最低レベルで、「民主党の指名候補として支持するか」との問いに「支持する可能性は低い」と答えた人が54%に上った。しかし、「再指名されれば支持する」とした人は45%で、トランプ氏より少しマシだった。
今回の大統領選は「国民の約7割が望まない」といわれる不人気な候補同士の対決だが、それでもバイデン氏がわずかに上回ったのは無党派層の差が関係していると思われる。無党派層の間ではバイデン氏の支持率が10%前後上回っていることが世論調査で示されているからだ。
それではトランプ氏は無党派層の支持を広げるために何をすればよいのか。
2012年の大統領選でミット・ロムニー共和党大統領候補の選挙顧問を務めたケビン・マッデン氏はこう提言する。
「トランプ氏はいつまでも2020年の選挙結果を蒸し返して後ろ向きになるのではなく、人々が関心を寄せる問題について未来志向のメッセージを発信する必要があります。すなわち、経済、移民問題、国家安全保障、外交、国際社会が抱える問題に焦点を当て、国をどう導こうとしているのかを語るのです」(PBSニュースアワー、2024年1月24日)。
しかし、あくまでも2020年大統領選で「大規模な不正があった」という虚偽の主張を続け、政敵への「復讐(ふくしゅう)」をほのめかすトランプ氏が、その強硬な政治姿勢を変えることはないだろう。それをすれば、「もはやドナルド・トランプではなくなってしまう」からである。