松本人志問題で文春否定の証言を「黙殺」、マスコミが私刑を下す“偏向報道”に走るワケPhoto:Chung Sung-Jun/gettyimages

テレビが「文春依存」、偏向報道にならないのか

 松本人志さんが「偏向報道」の被害を訴えているという。

 芸能ジャーナリスト・本多圭氏によると、『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)を、松本さんがBPO(放送倫理・番組向上機構)に人権侵害で申し立てることを検討しているとのことだ。同番組が性加害疑惑報道で連日大騒ぎをしていた一方で、「週刊文春」の記事の誤りを指摘しているセクシー女優の霜月るなさんの証言などを取り上げないことに不満を感じているらしい。(参照:『松本人志がBPOに人権侵害を申し立て? 霜月るな告発に一切触れない関西の情報番組を懸念』日刊ゲンダイ、3月13日)

 実はこのような問題はかねて指摘されていた。例えば、お笑い芸人の田村淳さんも自身のSNSでこのような苦言を呈している。

《ずっと同じ内容のポストして恐縮ですが…週刊誌に被害を訴えてる人たちの証言と同じくらい、クロスバー直撃の渡邊センスの証言と霜月るなさんの証言もマスメディアで扱われるべきたと思う…裁判前とはいえとても理不尽だと感じる》(原文ママ・3月6日)

 ここに登場する「クロスバー直撃の渡邊センス」というのは、「週刊文春」が「SEX上納システム」と名付けている性的行為強要疑惑に関与した、松本さんの後輩お笑い芸人だ。渡邊センスさんは文春記事を強く否定しているが、ご存じのない方がたくさんいらっしゃることからもわかるように、ワイドショーなどはほとんど取り上げていない。

 ただ、朝日新聞の慰安婦報道問題など、マスコミ不祥事の歴史を振り返ってみれば、このような「偏向報道」はちっとも珍しい話ではなく、むしろ「平常運転」だ。

「〜によりますと」と他人の話に乗っかって無責任に「疑惑報道」をあおるだけあおって、いざそれを否定するような声が出ても「黙殺」する。その結果、疑惑を指摘された人は「罪人イメージ」が定着して社会的に抹殺されていく――。そんな「人民裁判システム」と呼んでも差し支えないメディア・リンチがこれまでも定期的に繰り返されてきた、という動かし難い事実があるのだ。