2.従業員を常にパートナーと見なすリーダーであること
何年も前、ホルストが、ゲストに喜んでもらうためであれば、従業員は誰でも最大2000ドルまで自由に使ってかまわないという方針を発表したとき、リッツ・カールトンの中の人も外の人も、耳を疑ったものだ。
彼は従業員の判断力を信頼した。そして、その判断の正しさを裏付ける実際のエピソードが届くのを喜んでいた。
私もいくつかエピソードを知っているが、特にメアリーの話が気に入っている。ゲストが部屋に置き忘れたノートパソコンを届けるために、アトランタからハワイまで飛んだハウスキーパー〔清掃担当〕だ。
そのゲストは、チェックアウト翌日の午後に、ホノルルで開かれる国際会議で重要なスピーチを行うことになっており、そのために何としてもパソコンが必要だった。スピーチに間に合うようにパソコンを届ける必要があったが、翌日配達のクーリエサービスを信頼しきれなかったメアリーは、自分の手で届けることにしたのだった。
メアリーは、その機会を利用して短い休暇を取っただろうか? そんなことはしなかった。次のフライトですぐにアトランタに取って返したのである。自分の職場に戻ったときに彼女を待っていたのは、ホルストからの感謝状と、ホテルの仲間からの祝福のハイタッチだった。