経営側が管理職を救うための3つの対策
これまで見てきたように、今の現場の管理職の状況はとても厳しい。上位者である役員などの経営幹部は、管理職の業務過多の問題の解決に向けて、しっかりした対策を打たなければならない。
まず経営幹部がすべきことは、経営計画の見直しである。現在立てている本年の経営計画は、現場の脆弱性や実行力の低下を十分に加味したものになっているだろうか。そもそも机上で実行不可能な計画は、最初から失敗が運命づけられている。現在の組織の状況が本当に計画の実現に足るものか、しっかりと見極め、必要なら計画の修正を行うべきである。
第二に、最も脆弱性が高い部署や業務を特定し、そこが直面するであろう問題に対して、あらかじめ支援計画を立てておくことが重要である。無理な体制で無理な計画を実施すると、組織内でもっとも弱い部分にしわ寄せがくる。
たとえば、ダイハツの試験不正は、無理な生産計画を無理な体制で実施した結果、最終工程の試験のプロセスに過度な負担がかかり、不正にいたったものである。本来であれば、事前に試験工程の人員を増強しておくべきであったにもかかわらず、これらの支援は行われなかった。状況が悪化する前にそれを予測し、修正策を講じる。より大きな問題に発展する前に危機の芽を早い段階でつみとり、危機を未然に防がねばならない。
第三に、経営幹部は、目標を単に割り振るだけでなく、現場が直面する「三重苦」をどのように乗り越えて目標を達成するかについて、現場と一緒に具体的な戦略を練る必要がある。これまでのように下請け
企業に無理を押し付けるのではなく、現場の管理職が取りうる限られた選択肢の中から、最適な解決策を見出すための支援を行う。これには、新しい技術の導入や、作業プロセスの見直し、さらには社員のスキルアップやモチベーション向上のための施策が含まれるかもしれない。その際には、業務の変更が伴うから、繁忙期を外して実施するなどのスケジューリングの工夫も不可欠だ。
以上、三つの対策を挙げた。
これらを行わなければ、現場では、目標が未達に終わるだけでなく、無理な目標達成のための手抜きや偽装を行う可能性が高まり、最悪の場合、管理職のバーンアウトを引き起こすことになる。
管理職に大挙して退社されたり、傷病休暇で抜けられたりすると企業へのダメージは計り知れない。いや、そればかりでなく、仮に過労死を招くようなことにでもなれば、取り返しがつかないのは、先例を見れば明らかであろう。経営幹部は、これまでの延長線上に目標を設定し、PDCAを回そうとするだけでは不十分なのである。配下の管理職が心身に変調をきたす前に打てるべき手を打たねばならない。
(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)