ゴールドマン・サックスなど外資系金融で実績を上げたのち、東北楽天ゴールデンイーグルス社長として「日本一」と「収益拡大」を達成。現在は、宮城県塩釜市の廻鮮寿司「塩釜港」の社長にして、日本企業成長支援ファンド「PROSPER」の代表として活躍中の立花陽三さん。初の著作である『リーダーは偉くない。』(ダイヤモンド社)では、ビジネス現場での「成功」と「失敗」を赤裸々に明かしつつ、「リーダーシップの秘密」をあますことなく書いていただきました。リーダーだからといって「格好」をつけるのではなく、自分の「欠点」や「弱点」を素直に受け入れて、それをメンバーに助けてもらう。つまり、「リーダーは偉くない」と認識することが、「強いチーム」をつくる出発点だ――。そんな「立花流リーダーシップ」に触れると、きっと勇気が湧いてくるはずです。

優れたリーダーが、部下に「努力」を求めない“深い理由”とは?写真はイメージです Photo: Adobe Stock

「終わらない仕事はない」のか、
「仕事に終わりはない」のか?

「終わらない仕事はない」
 この言葉に救われた人は意外と多いのではないでしょうか?

 きつい仕事を任されて、プレッシャーとストレスに苛まれながら、いつ終わるとも知れない作業を続けていると、誰だって心が折れそうになるときがあるものです。
 そんなときに、信頼できる人物に「終わらない仕事はない」と励まされて、「そうだ。いまはつらいけれど、一歩ずつ前に進み続ければ、必ず仕事は終わる」と気持ちを立て直したことがある人はいらっしゃるかと思います。

 僕は、この言葉には真実味があると思っています。
 たしかに、通常のビジネスにおいては、いかに過酷な目標を課されたとしても、それを達成すれば仕事は終わりますし、どんなに頑張ってもその目標を達成することができなければ、どこかのタイミングで「中止」「撤退」という判断がくだされるはずです。

 その意味で、「終わらない仕事はない」という言葉は間違いなく真理ですし、状況次第ではありますが、難しい目標を前に苦しんでいるメンバーを励ますために、リーダーがこの言葉をかけるのが有意義な場面はあると思います。

 だけど、逆もまた真です。
 つまり、「仕事に終わりはない」という言葉も真理だと思うのです。

優れたリーダーが、部下に「努力」を求めない“深い理由”とは?立花陽三(たちばな・ようぞう)
1971年東京都生まれ。小学生時代からラグビーをはじめ、成蹊高校在学中に高等学校日本代表候補選手に選ばれる。慶應義塾大学入学後、慶應ラグビー部で“猛練習”の洗礼を浴びる。大学卒業後、約18年間にわたりアメリカの投資銀行業界に身を置く。新卒でソロモン・ブラザーズ証券(現シティグループ証券)に入社。1999年に転職したゴールドマン・サックス証券で実績を上げ、マネージング・ディレクターになる。金融業界のみならず実業界にも人脈を広げる。特に、元ラグビー日本代表監督の故・宿澤広朗氏(三井住友銀行取締役専務執行役員)との親交を深める。その後、メリルリンチ日本証券(現BofA証券)に引き抜かれ、数十人の営業マンを統括するも、リーダーシップの難しさを痛感する。2012年、東北楽天ゴールデンイーグルス社長に就任。託された使命は「優勝」と「黒字化」。星野仙一監督をサポートして、2013年に球団初のリーグ優勝、日本シリーズ制覇を達成。また、球団創設時に98万人、就任時に117万人だった観客動員数を182万人に、売上も93億円から146億円に伸ばした。2017年には楽天ヴィッセル神戸社長も兼務することとなり、2020年に天皇杯JFA第99回全日本サッカー選手権大会で優勝した。2021年に楽天グループの全役職を退任したのち、宮城県塩釜市の廻鮮寿司「塩釜港」の創業者・鎌田秀也氏から相談を受け、同社社長に就任。すでに、仙台店、東京銀座店などをオープンし、今後さらに、世界に挑戦すべく準備を進めている。また、Plan・Do・Seeの野田豊加代表取締役と日本企業成長支援ファンド「PROSPER」を創設して、地方から日本を熱くすることにチャレンジしている。著書に『リーダーは偉くない。』(ダイヤモンド社)がある。