遠藤 いやでも……情緒は安定してないです(笑)。

勝丸 3巻のカバーの袖(内側に織り込まれた部分)に「失敗以外、誰にも気づいてもらえないお仕事・スパイ。僕には無理です。僕は褒められたい派です。」と書かれていましたね。

遠藤 その通りです(笑)。実際に勝丸さんのお仕事は、功績が認められなかったりするのでしょうか?

勝丸 一般的な警察官は殺人などの凶悪事件を解決すれば、「表彰」という形で称えられます。しかし、公安は「功名を語らず」と先輩から教わってきて、任務に成功しても褒められることはまずありません。そういう意味でも、一つの任務が終わったら、粛々と次の任務に取りかかれる人が向いています。

仕事はしんどい。『SPY×FAMILY』作者を支える“たった一つの生きがい”とは?Photo by Shinya Morimoto

遠藤 どうしたらそうなれるんですかね?公のためにという愛国心に似た感情も必要ですか?

勝丸 私は「健全な愛国心」という表現をしています。それもモチベーションに繋がっています。

遠藤 やはりそうなんですね。お給料などもモチベーションに繋がったりするのですか?公安の給料事情、想像つきません。

勝丸 公務員なので、基本的には他の制服警察官と同じなんです。ただ「超勤」、民間でいうところの残業代が、とにかくつきます。朝から晩まで張り込んだり、全国津々浦々を追跡したりするので、勤務時間が膨大になるからです。

遠藤 残業なら僕も負けてないです(笑)。寝る時間以外はほとんど仕事なので。

勝丸 こうした取材が息抜きになればいいですが…

遠藤 今後の作品作りのための取材みたいなものなので、これもほぼ仕事ですね(笑)。でも、とても楽しいです。

スパイを追いかける“喜び”

遠藤 忍耐が求められそうな公安のお仕事ですけど、振り返ってどうでしたか。