仕事はしんどい。『SPY×FAMILY』作者を支える“たった一つの生きがい”とは?

大ヒット漫画『SPY×FAMILY』作者としてスパイを描く遠藤達哉さん。公安警察時代はときにスパイ、ときにスパイハンターとして日本の治安を維持した勝丸円覚さん。フィクションとリアル、それぞれの世界でスパイを熟知する2人による豪華対談。第3回(全8回)は、勝丸さんが、「スパイに向いている人の特徴」を解説します。スパイ漫画の作者である遠藤さんはスパイに向いているのでしょうか。さらに「漫画家の仕事は楽しいか」という問いに、遠藤さんが率直な思いを語ってくれました。(構成/ライター・東田俊介)

主人公のロイドはイケメンだけど......

遠藤 勝丸さんは、これまでの経験からどんな人が「スパイに向いている」とお考えですか?

勝丸 「印象に残らない人」は挙げられますね。突出してハンサムじゃない、極端に背が高くない、太ってない人が向いています。目立ってはいけない仕事ですから。

遠藤 なるほど。漫画の場合はエンターテイメントなので、担当さんに「キャラクターはイケメンにしろ」って言われますけど(笑)。

仕事はしんどい。『SPY×FAMILY』作者を支える“たった一つの生きがい”とは?『SPY×FAMILY 1』より抜粋

勝丸 実物を見てがっかりされないか不安です(笑)。性格でいうと「情緒が安定してる人」ですかね。公安の仕事は非常に単調で地味。ほどんどの時間が尾行や張り込みに費やされます。『007』の華やかなスパイの世界に憧れを持って、外事警察に入ったんですけど……「ここまで地味なのか」と何回も思いました(笑)。なので、「愚痴を言わず耐えられる忍耐強さ」を持っているかというのも一番大きいかもしれません。

遠藤 漫画では、目立ってしまうような派手な服装やアクションを描く場合もあります。主人公のロイドなんて、胸に組織のバッジつけてますからね(笑)。情報漏洩が服着て歩いてるようなもんです。

勝丸 私が監修を務めたドラマ『VIVANT』では、監督から「公安のシーンはリアルで地味な要素を少なくしたい」と言われるほど公安という仕事は地味です。監修としては、あまりに現実からかけ離れた演出だけ指摘するようにしていました。そもそも、阿部寛さんと竜星涼さんという公安には絶対に在籍していないようなハンサムな人が演じていましたし。

スパイになりたくない理由

勝丸 漫画家である遠藤先生は、コツコツ同じことに集中するのが得意なのではないかと思いました。かなりスパイには向いてるような気がしますよ。