関係者の間でささやかれる
北朝鮮のドタキャン理由とは?

 もし今回のドタキャンがなければ、平壌で日本対北朝鮮が行われるのは約13年ぶりだった。久々となる平壌での試合を実現させるべく、DPRKFAは全面的に協力する姿勢を見せ、AFCによる金日成競技場の事前視察などを受け入れてきた。

 それなのに、DPRKFAが急きょ平壌開催を返上したのはなぜなのか。その理由が記されているであろう、「DPRKFAがAFCに送付したレター」の詳細な中身は、JFAも把握していないという。

 だが、実はここにきて、サッカー関係者の中で「とある説」がささやかれはじめた。

 知らない人も多いかもしれないが、日本では今、極めて致死率の高い「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」という疾病の感染者が増加している。「人食いバクテリア」の異名を持ち、感染者は手足が壊死することもある恐ろしい病気だ。

 北朝鮮は、それを国内に持ち込ませないために防疫上の措置を取ったというのだ。

 国内の医療体制が極めて脆弱で、医薬品や医療器具も慢性的に不足している北朝鮮は、新型コロナウイルス禍が始まった直後の2020年1月に世界で初めて国境を封鎖。ごく一部の例外を除いて、昨夏まで人々の往来を禁止していた。この厳格な措置は、疫病に対する異常なまでの警戒心を象徴している。

 当時の警戒ぶりは、国民からの人気が高いサッカーも例外ではなかった。北朝鮮は2019~21年にかけて行われた、カタールW杯アジア2次予選も途中で棄権した。このときは北朝鮮が消化していた全5試合が無効扱いとなり、同じグループリーグに属していた韓国やレバノンなど、北朝鮮を除いた4カ国で出場権が争われた。

 DPRKFAは今回、当時と同じく「疫病」という不可抗力を理由に、日本戦の平壌開催返上を申し出たのだろう。しかし、AFCは説得できたものの、FIFAには不可抗力にあたるとは認められず、要求をすべて突っぱねられたというわけだ。

 しかし、よくよく考えると、今年2月下旬には北朝鮮女子代表が来日し、日本女子代表(なでしこジャパン)とパリ五輪アジア最終予選を戦っていた。先述の通り、3月21日には北朝鮮の男子代表が国立競技場で日本と戦った。疫病に対する警戒心が強いはずの北朝鮮が、「人食いバクテリア」の患者が増えつつある日本に選手を送り込むのはおかしな話だ。

サッカー北朝鮮のドタキャン騒動、関係者がウワサする「とんでもない言い訳」とは?3月21日に日本で行われた、北朝鮮代表対森保ジャパンでの一幕 Photo:Koji Watanabe/特派員/gettyimages

 つまり、疫病うんぬんのうわさが正しかったとしても、これは取ってつけた表向きの理由なのだろう。実際には、平壌で日本戦が開催されることを快く思わない人物・勢力が北朝鮮内に存在していると見ていい。