3月25日(日本時間26日)に会見を行ったドジャース・大谷翔平選手3月25日(日本時間26日)に会見を行ったドジャース・大谷翔平選手 写真提供:Los Angeles Dodgers/UPI/AFLO

大谷翔平選手の通訳を務めていた水原一平氏の違法賭博を巡り、アメリカでは大谷選手にも厳しい視線が向けられている。アメリカのメディア報道を整理するとともに最新報道を読み解く。(イトモス研究所所長 小倉健一)

「私にも通訳がいれば
無罪放免だったのに」

 ドジャースの大谷翔平選手の通訳兼親友である水原一平氏が解雇された。この解雇は、大谷選手の口座から、水原氏の違法賭博の借金を返済するために違法なブックメーカー(賭け屋)の胴元マシュー・ボウヤー氏に数百万ドルが送金されていたことが明らかになったためだ。

 MLB(メジャーリーグベースボール)は、大谷選手と水原氏との間で起きた違法賭博問題について、調査を実施している。アメリカではこの問題が、MLBの伝説的存在であるピート・ローズ氏が1989年のレッズの監督時代に起こした賭博スキャンダルに匹敵する可能性があると言われている。

 ピート・ローズ氏はこれにより永久に球界から締め出されたが、それは彼が選手やマネージャーとして関与していた試合に賭けていたという事実が発覚したためだ。ピート・ローズ氏は当初は容疑を否定していたものの後に、「私は自分のチームの勝利だけに賭けた」と自軍の勝敗に賭けていたことを告白している。

 大谷選手は3月25日(日本時間26日)の会見で、「僕自身は何かに賭けたり、誰かに代わってスポーツイベントに賭けたり、それを頼んだりということもないですし、僕の口座からブックメーカーに対して誰かに送金を依頼したこともちろん全くありません」と、違法賭博への関与を否定している。

 だが、この大谷選手の一連の騒動について、ピート・ローズ氏は動画で「(私がMLBに在籍していた)70年代と80年代に通訳がいれば、私は無罪放免だったのに」(“Well… back in the 70s and 80s I wish I’d had an interpreter, I’d be Scott-Free…”)という皮肉交じりのコメントを残した。いまだに大谷選手には疑惑の目が向けられているといえよう。

疑惑の発端は
米メディアESPNのスクープ

 この疑惑の発端は、米メディアESPNが3月20日に報じたスクープだ。この報道によると、大谷選手の口座からボウヤー氏に少なくとも450万ドル、日本円で約6億8000万円が支払われたとされている。

 水原氏は当初、大谷選手は「ギャンブルの借金」を水原氏の肩代わりをする形で返済したとESPNに語った。しかしその後、大谷選手の弁護士は、大谷選手が「大規模な窃盗の被害者」であると主張している。日本の国税庁に当たるIRSは3月21日(日本時間22日)に、ロサンゼルス支局を通じてボウヤー氏と水原氏の捜査をしていることを認めた。大谷選手も、3月25日(日本時間26日)になって、記者会見を開き、自らが何も知らない「被害者」であることを強調している。

 相反するストーリーの混乱に加え、ボウヤー氏については連邦捜査の対象となっている賭け屋であること以外、日本ではほとんど何も報じられていない。だが、米ワシントンポスト紙は次のように報じている。