穀物を人間と家畜で
どう分け合うか

 人口増加に比して増加しない穀物生産量が予測される未来においては、人と家畜の穀物の奪い合いのような本末転倒な事態になりかねない。

 そこでもし5億トンを人間の食料として取り戻すことができれば、1人1日当たり必要な2400キロカロリーを確保したうえで、世界人口のどれくらいを飢餓から解放することができるだろうか?

 畜産物を除いた場合、ヒトは計算上穀物を年間250キログラム食べれば1日当たりで2400キロカロリーを確保できる。小麦・コメ・トウモロコシなどの穀物は平均して1キログラム当たり3500キロカロリー程度であり、だから年間にして1人当たり約250キログラムの穀物を摂ればよいことになる。

 このようにして5億トンを人間の直接の食料に取り戻すことができれば、20億人、現在の地球の人口80億人の4人に1人を飢餓あるいは隠れ飢餓から解放することができるだろう。

 他方、飼料穀物が5億トン減ったことによる畜産物生産への影響は飼料要求率を3とすると、1億6700万トンが減ることとなり、全体として1億6700万トンが残ることになる。

 その減少分は、何人分のカロリーを失うことになるだろうか?

 1人1日当たりの必要カロリーを2400キロカロリー、年間にして87万6000キロカロリーは変わらないものとする。結果は約4億人となり、5億トンの穀物を直接の食料に回すことで生まれる20億人から4億人を差し引いた16億人が結局助かる勘定になろう。

 畜産物のための飼料を減らした場合の効果は明らかである。