肉と魚の経済学#4
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近い将来、日本人が当たり前のように食べている肉が、食卓から消えてなくなるかもしれない――。こんなうそのような未来が訪れかねないデータが続々と報告されている。売り手である中国の「買い手」化、勢力を増す天変地異と家畜の感染症……。特集『肉と魚の経済学』(全13回)の#4では、迫り来る世界の食肉供給危機というシナリオをひもとく。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

昆虫食推奨した国連が7年前に警告発した
「肉が食べられなくなる危機」が現実に?

「肉や魚が食べられなくなる将来に備えて、昆虫食の実用化を真剣に検討すべきだ」――。

 こんなぎょっとする内容のレポートが、かつて話題となった。国連食糧農業機関(FAO)が2013年に発表したもので、将来的に肉と魚が手に入らなくなるリスクが強調され、昆虫で代替する手段を具体的に検討した200ページにもわたる膨大で本格的なレポートだ。それから7年後の20年。「肉が食べられない未来」がそこかしこで、現実味を持って語られるようになっている。

「肉の消費量」は人口の増加に伴って増える傾向にあるが、とりわけ豊かになった国民の数に比例する。生命維持に必要な主食の穀物のみならず、栄養価の高い“おかず”を食べる余裕がなければ肉を買えないからだ。同様に、畜産も「余裕」がなければ行うことができない。家畜の肉1キログラムを生産するためには、餌として約7キログラムの穀物が必要になるからだ。

 最近10年間の傾向を見ると、世界の肉の消費量は生活が豊かになる国が増えるにつれ、15年まで右肩上がりで伸びてきた。これまではその需要を満たす形で何とか食肉を供給できていたが、ここ数年、それが危ぶまれる事態が次々と起こっている。それはいったい何なのか。