だから日本人はごはんの量を増やし、パン食が減っている欧米人、特にアメリカ人やイギリス人は肉食を控えてパンを食べることで節約が可能になるというわけだ。
また、主に先進国の肥満に注目する世界肥満連合(WOF)によると肥満人口は2035年までに40億人にものぼるという。いまの食品ロスも世界で約10億トン、1人1日当たりでは342グラムにも当たる。こうしたことも各国政府が国民に働きかけて改善できれば、1人1日100グラムの節約は十分に可能なはずである。
(2)先進国は1人1日200グラムの増産を
一方、これら23億人が暮らす国々が、全体で1人1日200グラム当たりの穀物生産を増やすと、年間で1億7000万トンの穀物を増産することができる。生産が増えると価格は下がる傾向になるだろうから、その増加分を食料の不足する残る57億人に販売するのである。この57億人の住む国々に対しても、増産ができるところには協力をお願いする。
協力が増えれば増えるほど、不足する穀物を地球全体で負担する広がりができる。
ここには、世界統一的な価格補償制度の効果が表れる可能性がある。
高橋五郎 著
途上国の無理のないところで、先進国より50グラム少ない、 1人1日当たり150グラムの穀物の増産をすると、年間3億トンあまりの穀物を新たに手にすることができよう。
これに必要な耕地面積は1ヘクタール当たり収量を標準的なレベルの5~6トンとすると、5000~6000万ヘクタール、全世界の耕作放棄地面積は1億ヘクタール以上あるとされているので、数字上は十分に賄える勘定だ。
以上の2つの対策を合わせると、全体では5億トン程度の増産、これに対して世界で不足する穀物は筆者の推定では約8億トンなので十分ではないが、不足量は約3億トンに縮小することが期待できよう。もしあと、1人1日100グラムのロスを解消できればこの不足も消えるだろう。