悩み続け、探し続けることが大事

キム 能力は身につけていくものです。先天的な天性があったとしても、それに頼るべきではないですし、天性がなかったとしても、悲しむべきではないと思います。自分の人生が何回もあれば、今回は恵まれてないんだけど、次回生まれたときに期待しよう、と思えばいいわけですが、そうではない。われわれが生きるこの人生はおそらく唯一無二のものであるはずですので、自分に与えられた今の状況を前提にした上で、自分の幸せというものを意志と行動を通じて築き上げていかないといけない。

 周りや環境のせいにするとそれは楽ですが、それが中長期的には自分というものをむしばんでいくということに気付くべきです。その時は辛くても、愚痴を言わない、不満を言わない、だれかのせいにしない、を徹底的に心がけて、すべては自分の決断と責任でやっていくんだという気概を持った人間は、中長期的には必ず強くなっていくはずです。

 周りが「お前、どうせそれ駄目だろう」と言うかもしれませんが、そういうネガティブな反応に左右されない強い自分を作ることです。そう言っている人のほとんどは何も責任をとってくれない。自分について自分以上に知っている人はいないはずなんです。自分に対する絶対的な信頼を持って、また信頼に値する自分というものを自分の努力を通じて、時間をかけて築き上げていく決意をすることで絶対不可侵の自己を築いていけるのではないでしょうか。

木暮 やりたいことが見つかりませんっていうコメントも僕はよくもらうんですが、何をやっていいかわからないとか、自分が何をやりたいかがわからないときにどういう行動をしていけばいいと考えますか。

キム やりたいことは、人生の中で簡単に見つかるものではなく、見つかったとしても、それを安易に信じ込む必要もないと思います。後者の場合であっても、毎日のようにそれは本当に自分がやりたいことなのかを検証し続けることです。
 重要なのは自分のやりたいことが決まっているかどうかではなくて、やりたいことを問い続け、探し続けようとする姿勢こそが大事だと思うんです。

 命は有限であり、それはいつ終わるかわからないものですから、いつ終わっても悔いの無い人生を生きたと自負できるような瞬間の積み重ねとしての人生を生きることが大事ではないでしょうか。

 あと、精神的な姿勢として、今日を犠牲にして明日の幸せを勝ち取る、といった今日の幸せと明日の幸せの関係性をトレードオフとして捉えるのではなく、今日の頑張っている自分は自分の成長や幸せに向けて一歩ずつ踏み出しているのだという感覚があれば、今日の幸せと明日の幸せの関係性は補完的に、相乗的に変わっていくと思います。

 ただ、最初からその境地に至るのは難しいので、最初はちょっときつくても我慢をする必要がある。努力が結果を生み出すという実体験をある程度、蓄積していく中で、自信の根拠が生まれ、そういうときに初めて、過程までも楽しめる自分がそこにいるんじゃないかと思います。

木暮 おっしゃる通り、過程を楽しむのは、最初はなかなか難しいと思います。好きじゃないし、嫌な思いもする。でも、そのおかげで、後からいい思いをしたりもするんですよね。

次回は4月10日更新予定です。

「対談 媚びない人生」バックナンバー

第1回 媚びない人生とは、本当の幸福とは何か 『媚びない人生』刊行記念特別対談 【本田直之×ジョン・キム】(前編)

第2回 大人たちが目指してきた幸福の形では、もう幸福になれないと若者たちは気づいている【本田直之×ジョン・キム】(後編)

第3回 日本人には自分への信頼が足りない。もっと自分を信じていい。【出井伸之×ジョン・キム】(前編)

第4回 世界を知って、日本をみれば「こんなにチャンスに満ちあふれた国はない」と気づくはずだ。【出井伸之×ジョン・キム】(後編)

第5回 苦難とは、神様からの贈り物だ、と思えるかどうか【(『超訳 ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(前編)

第6回 打算や思惑のない言葉こそ、伝わる【(『超訳ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(後編)

第7回 いつが幸せの頂点か。それは死ぬまで見えない【(『続・悩む力』)姜尚中×ジョン・キム】(前編)

第8回 国籍という枠組みの、外で生きていきたい【(『続・悩む力』)姜尚中×ジョン・キム】(後編)

第9回 「挑戦しない脳」の典型例は、偏差値入試。優秀さとは何か、を日本人は勘違いしている【茂木健一郎×ジョン・キム】(前編)

第10回 早急に白黒つけたがる人は幼稚であると気づけ【茂木健一郎×ジョン・キム】(後編)

第11回 やりたいことがたまたま会社だった。だから、自然体で起業ができた。【リブセンス村上太一×ジョン・キム】(前編)

第12回 不安は、将来に対する可能性の表れである。【リブセンス村上太一×ジョン・キム】(後編)

第13回 一番怖いのは、頭が固まってしまうこと【安藤美冬×本田直之×ジョン・キム】(前編)

第14回 面接で落とされたおかげで今の自分がいる【安藤美冬×本田直之×ジョン・キム】(中編)

第15回 自分を大きく見せようとすると、失敗する【安藤美冬×本田直之×ジョン・キム】(後編)

第16回 自分が自分をしんどくさせている【小倉広×木暮太一×ジョン・キム】(前編)


 

 

たちよみページあります!


【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】

定価:1,365円(税込)
四六判・並製・256頁 ISBN978-4-478-01769-2

◆ジョン・キム『媚びない人生
「自分に誇りを持ち、自分を信じ、自分らしく、媚びない人生を生きていって欲しい。そのために必要なのは、まず何よりも内面的な強さなのだ」

将来に対する漠然とした不安を感じる者たちに対して、今この瞬間から内面的な革命を起こし、人生を支える真の自由を手に入れるための考え方や行動指針を提示したのが本書『媚びない人生』です。韓国から日本へ国費留学し、アジア、アメリカ、ヨーロッパ等、3大陸5ヵ国を渡り歩き、使う言葉も専門性も変えていった著者。その経験からくる独自の哲学や生き方論が心を揺さぶられます。

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小倉広 『僕はこうして、苦しい働き方から抜け出した。』

定価 1,470円(税込み)
WAVE出版・刊
ISBN 9784872905748

新卒でリクルートに入社、営業、企画、コンサルティング各部署でMVP受賞、同期の上位2%で課長へ昇進、その後ITベンチャー役員となり上場 へ……。一見すると華々しく見える著者の経歴の陰に、2度のうつ病を患う苦しい時代があった。本書は著者が体験した「働く苦しみ」とそこから「抜け出す」 きっかけとなった生身を剥き出しにしたような言葉が紹介されている。「会社を変えるな、自分を変えろ」「心を鷲づかみにされる」文章が心に響く「泣けるビ ジネス書」。

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木暮太一『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』

定価 903円(税込)
星海社・刊
ISBN 978-4061385160

〈2013年新書大賞〉67人が2012年に出版された新書1500冊から厳選して、第8位!
経済学の古典、マルクスの『資本論』と、世界的ベストセラー、ロバート・キヨサキの『金持ち父さん、貧乏父さん』は、じつは、まったく同じことを言ってい た!!なぜ、仕事の合間に生活するような人生を送らなければならないのか?なぜ、努力をしても、成果をあげても、給料は上がらないのか?なぜ、社会が豊か になっても、働き方は貧しいままなのか?そして、どうすればラットレースに巻き込まれない「幸せな働き方」に到達できるのか??それらの答えがこの中にあ る。

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