日本で英語を学習する若者たちは、そのまま勉強し続ければ、いつか自由自在に操れるほど英語が流暢になると信じ(させられ)ている。だが、筆者がこれまで日本国内や海外で概観してきた限りでは、残念ながら日本語だけで育った日本人であるなら、それは非常に難しい。筆者の知る留学経験がある日本の政治家や高級官僚、外交官でさえ、国際的な場面で、英語で丁々発止の議論をできる日本人は極めて少ないことからも明らかだ。

 当然ながら、適切な教育とカリキュラムを受けていれば日本人でも英語が上達することはできるのに、それを不可能にしているのは、官僚組織やメディア、日本人全体の意識が関係していると思っている。

文科省の教育プロジェクト
「JETプログラム」の実情

 文部科学省が毎年実施している「英語教育実施状況調査(23年)」では、政府が目標とする英語力(中3生で「英検3級」以上、高3生で「英検準2級」以上)を身につけているのは中3生で49.2%、高3生で48.7%しかなかった。

 この調査で案の定だと思わされたのは、英語教員自身の英語力調査だ。「英検準1級」相当以上の英語力を持つ教員の割合は、中学校では41.6%しかいない。高校では72.3%だったが、小学生、中学生という頭の柔らかい時期に英語の言語感覚を教えるという意味では、高校よりも中学の英語教師のほうが重要だと言える。言語習得での臨界期は10歳前後だとも言われるので、中学でも遅いかもしれない。

 それなのに、日本の中学では、英語力レベルが「大学中級程度」とされている英検準1級を持つ英語教師は4割しかいないというのだ。当然ながら彼らは大学を出て、英語を特別に専攻してきたはずだ。

 文科省にも、外国人教師の導入という発想はある。日本では、1980年代には高度経済成長に伴ってグローバル化が進み、英語教育の重要性が盛んに叫ばれるようになった。そこで1987年に初めて英語圏の若者を招致して、都道府県の公立学校に派遣して英語教育のサポートをするという「JETプログラム」が始まっている。

 最初は米国、英国、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国から848人が招かれ、2022年には約5700人に増えている。