新入社員の頭の中がだんだん変化している

 午前中最後のワークで取り入れられたのは、「WPL(*3)」診断だ。「WPL」は「Work Place Learning」の略で、職場の育成力と個人の成長力を可視化するための診断だ。受講者たちはその診断のためのテストを事前に受けていた。第1回のフォロー研修では「DIST(*4)」というストレス耐性テストを、第2回では「DPI(*5)」という職場適応性テストを研修に取り入れていたが、今回の「WPL」にはどういう意図があるのか――研修後に、内山講師に尋ねた。

「1年目が終わろうとしているこの時期に、WPLでの診断結果から“成長”の現状を自分自身で把握し、2年目に向けての仕事への姿勢を考えてほしいという意図です。DISTとDPIもそうですが、フォロー研修の運営会社の強みであるテストが、現状を見る指標の一つになっています」(内山講師)

*3 「WPL」(ダイヤモンド社)は、現場における人材の成長と学びの環境を「見える化」するもの。現場の学び力を向上させ、人材の成長を促進することをねらいとしている。
*4 「ストレス耐性テスト DIST」(ダイヤモンド社)は、仕事をする上で直面するストレス原因を4つに分類し、それらに対する耐性を受検者の普段行動から測定する。また、発生したストレスを受検者がどのように解消しようとするかの特徴を詳らかにする。
*5 「職場適応性テスト DPI」(ダイヤモンド社)は、仕事への向き合い方や他者への態度、組織への順応など広い範囲をカバーしているテストで、採用場面でのスクリーニングや受検者の特徴を広く理解することに適している。

 まず、研修テキストに沿って、「『仕事を通して成長できたことを実感しているか』という経験学習の成果に関連する7項目」と、「『仕事を通して成長しやすい特性を持っているか』という経験学習のプロセスに関する7項目」についての自己チェックを行い、その後、事前に受けたテストによる評価が記載された「診断シート」が各自に配られた。そして、自己評価とのギャップが明らかになったところで、グループでの対話がなされた。「結果に違和感があったら、そのこともしっかり考えましょう」と内山講師。評価の高低ではなく、ギャップも含めて自分の現状を知り、今後の成長に生かすことが重要なようだ。

 内山講師から、研修受講者全体の平均的な傾向について解説があり、さらにもう1枚、別のシートが配られた。「『仕事を通して成長しやすい特性を持っているか』という経験学習のプロセスに関する7項目」を、各受講者それぞれの上長が評価したものだ。前回のフォロー研修でも、「DPI」診断の項目を上長が評価したシートが配られるというサプライズがあり、会場内が盛り上がったが、今回も、受講者たちはやや興奮した様子でシートを手に取り、熟読し始めた。自己評価だけではなく、他者からの評価を知ることで、よりはっきりと自分の現状が見えてくるはずだ。再び、グループで意見の交換を行い、WPL診断で得た学びを付箋に書いたところで、お昼休憩となった。

 1時間休んだ後、受講者たちは他のグループのテーブルを回り、みんなの付箋を見ていく。上長のメッセージを励みに思うコメントもある一方で、WPL診断の項目にある「キャリアデザイン」への疑問をつづった付箋も見受けられた。内山講師がこれまで話してきたフレーズに、「頭の中の変化を研修後に(仕事で)使う」というものがある。疑問が生まれるのも、新入社員たちの頭の中が変化している証しだろう。経験から学ぶ力を、彼ら彼女たちが身につけてきているように私には思えた。