後輩に向かっての“フィードフォワード”とは?

 午後は「1年目の総括」に入った。最初に、この1年でそれぞれの職場において「評価されたこと」「注意されたこと」を各自で書き出し、グループで対話する。その後、2つ以上の「評価された行動」「注意された行動」と、「なぜ、評価・注意されたのか」「後輩へのアドバイス」をワークシートに書き、内山講師から、「これまでとは違う組み合わせでグループのメンバーを半分に分け、『話し手』『聞き手』『書記』に役割分担をしてください」という指示があった。Aさんの話をBさんが聞き、Cさんがワークシートに記入して、Aさんがそのワークシートを自分のものとして提出する――つまり、お互いのワークシートを交換して記入していく仕組みだ。研修終了後に、内山講師にそのねらいを尋ねた。

「この方法では、自分で書く必要がなく、話せばよいだけなので、本人の負荷が下がります。その分、書記役の負荷は高くなりますが、話し手のために責任を持って書こうとするため、内容が深まるのです。自分で書くと、『これくらいでいいかな……』と手抜きをしてしまうこともありますが、他の人のワークシートだと、『記入欄をもっと埋めてあげよう』と考え、相手への質問も多くなります。役割を分担することによって、コミュニケーションの活性化も図れるのです」(内山講師)

 また、「後輩へのアドバイス」を語ることも、社会人1年目の総括をするうえでの “仕掛け”になっているという。

「自分の経験をもとに、後輩にどんなことを言えるのかを考えることで、自分自身を客観視できるようになります。視点をずらすことによって、振り返りがしやすくなるように、研修のプログラムを設計しました。各グループの様子を見て回りましたが、生き生きと自分のエピソードを話している受講者が多かったですね。まさに、後輩に向かっての“フィードフォワード”をしているようでした。2年目に向けての準備がきちんとできているのではないかと感じました」(内山講師)

 次に、「この1年で自分自身が変化したこと」を、「考え方」と「行動」から挙げていった。どのグループも対話が途切れることなく時間を進めていく。受講者一人ひとりに、多くの「気づき」がもたらされているようだった。