日銀短観から見えた
金融市場と企業経営者の認識のズレ

 安倍晋三政権の最大の関門は夏の参議院選挙。その命運は経済政策における成果にかかっている。もしも、アベノミクスに対する信頼や期待が薄れる中で参院選を迎えることにでもなれば、自公与党で、参院での安定多数を実現することがきわめて困難になる。

 注目された3月の日銀短観(4月1日発表)は、その内容、それへの反応がともに微妙なものであった。

 アベノミクスへのメディアの楽観的な報道や、それを受けた金融市場の活況に対して現場の企業経営者の認識や判断にはかなりのズレがあったという印象だ。

 それは、新聞が景況感は9ヵ月ぶりに改善したことを大見出しで報道しているのに、市場は大きく円高、株安に振れたことが如実に示している。

 これは景況感の改善が市場の予想に及ばなかったことによる修正だろう。3、4日に予定される黒田日銀の最初の金融政策決定会合を市場は固唾を呑んで見守っている。

 黒田日銀総裁は、2年で2%の物価目標を達成するために「やれることはなんでもやる」と公言した。まるで政治家の街頭演説のような発言だ。もしも状況を好転させるために、このような情緒的な発言を乱発すれば、その効果は逆転する恐れもある。政策の具体的な発動があればそれでよいのであって、威勢のよい発言は無用である。

アベノミクスには
「国民生活に資する姿勢」が欠けている?

 さて、参院選に臨む安倍政権にとっては、言うまでもなく単に株高、円安が続けばよいわけではない。そのマイナス面がプラス面を大きく上回ることになれば、政権の命取りにもなりかねない。

 特に注意すべきは、中小企業経営や個人の生活への圧迫、そして新卒者の就職状況だ。