初対面の人との会話は、手探りで話題をつなごうとしたら難しいもの。そこでトークのプロ・阿川佐和子がおすすめするのは、小話とシモネタ。彼女のハートをがっちりつかんだ名優・森繁久彌の語り口は、すべてのビジネスパーソンの参考になるかもしれない。※本稿は、『話す力 心をつかむ44のヒント』(阿川佐和子、文藝春秋・文春新書)の一部を抜粋・編集したものです。
初対面同士の会話には
ちょっとした小話が役に立つ
ちょっとした小話を知っていると、初対面の会話のときも役に立ちます。こういう小話は、得てして外国産のものが多いようで、つい先日もアラブの王様のことが話題になったとき、私は披露しました。
「アラブの王様と言えば、昔聞いたジョークですが、あるアラブの王様がフランスのニースに旅行にお出かけになりました。ニースの空港に到着した一機目の飛行機からアラブの王様が降りてきて、二機目の飛行機から奥様方が降りてきて、三機目の飛行機からは子供たちが降りてきて、四機目の飛行機からメイドや料理人が降りてきました。そのあとにも、たくさんの食料品、さらにロールスロイスが数台、音楽隊、兵隊を乗せた飛行機が続々と着陸しました。
すると十何機目の飛行機から、スキー道具が降りてきたのです。ニースで迎えた人たちは驚いて、
『畏れ多くも王様。さすがにニースでスキーをなさるのは無理かと存じます』
申し上げると、王様がお答えになりました。
『次の飛行機で雪が着く』」
それを聞いていたある紳士が、「それ、まんざら作り話ではないみたいですよ」。そう教えてくれました。
「アラブが石油で大金持ちになった時代、本当にそんなふうに飛行機が行列して到着したという話を聞いたことがあります」
思わぬ展開になりました。そしてもう一人の方が、「アラブのジョークで僕が知ってるのはね」と、さらに場は盛り上がったのです。