アラブの小話だけでなく、きっと皆さんも、「中国の昔話」とか「イタリアのジョーク」とか、「イギリス英語とアメリカ英語の違いの話」とか、たくさんご存じのはず。

 そんな「ウイットに富んだ海外の小話」を頭の抽斗に二つ三つ持っていると、いざというとき活躍してくれるでしょう。国際的に流布されている話だけではなく、自分の旅行失敗談やびっくり談や「信じられなーい!」体験談も、必ず役にたつ日が訪れます。

 そしてそんな話を一つ披露してみると、きっと聞いていた人の中から、「だったら僕はね」という具合に、次々にバトンが渡されること間違いなしです。

風格すら漂うシモネタを語る
森繁久彌の情緒ある佇まい

 最後にシモネタが登場したら、そのパーティは成功したと言えるだろう。そういう言葉がイギリスにあると、昔、誰かに聞いた覚えがあるのですが、今回、あちこちで検索してみても、まったくヒットしないのです。あれは誰に教えられたのだったかしら。

 でもその言葉の意図するところはわかるような気がします。すなわち、それほどに集まった人たちが打ち解けて、たとえ話題がシモネタになっても顰蹙を買わない雰囲気が生まれたということではないでしょうか。

 シモネタを持ち出すタイミングは難しいですが、シモネタを決して下品だと相手に感じさせない語り方のできる人は魅力的だと、いつも思います。

 だいぶ昔、森繁久彌さんに週刊文春のインタビューに登場いただいたことがあります。対談場所に現れた森繁さんは、お付きの方の手を借りて、ステッキをついてゆっくり入っていらっしゃいました。

 椅子に腰掛けて対談が始まってみたものの、どうも落ち着かないご様子です。耳が左右とも遠くなり、人の話が聞きづらくなっているとおっしゃった。

「補聴器を入れてらっしゃるのですか?」と訊ねると、「うん。補聴器をしていると、夜、隣の部屋のアハーン、アアーンっていうのも聞こえるの」。