モチモチの木と
クリスマスツリーの共通点

 私は今、とある農村の古民家に滞在してこの原稿を書いています。夜になると外は真っ暗で、蛙の鳴き声しか聞こえません。静かすぎて、本当に座敷童が出てきそうです。山の中の真の闇。それを体験していないと、豆太の勇気が十分にはわからないことでしょう。

 モチモチの木に灯りがつく……、これはクリスマスツリーを連想させますね。クリスマスツリーも、元はと言えば、冬至の祭りから来ているという説があります。

 モチモチの木に灯りがつくのは、「霜月二十日」の晩のこと。現在の暦で言えば、ちょうどクリスマスの頃です。これは、日本版「聖なる夜の物語」なのでしょう。

 このモチモチの木は、「医者様」によれば、トチの木です。じさまが、餅をついている場面も出てきます。先日、私も初めて、本物のトチ餅を食べることができました。と言うのも、あんこの入ったような現代風のトチ餅は食べたことはあったのですが、トチの実だけで作った素朴なものは初めてだったのです。豆太もこれを食べたのでしょうか?

 感想は……あまりおいしくない。やはり、今は甘くておいしいものを食べ過ぎているのでしょう。

 縄文人の主食は「栗」だった、奈良時代になっても、万葉集の「貧窮問答歌」には栗の食べ物が出てくる、栗を食べるために村には栗の木をたくさん植えていた、という話を、万葉学の先生から聞いたことがあります。栗だけじゃなく、トチの実やドングリなどは保存の利く貴重な食べ物だったのでしょう。

 もう一つ、トチの木にまつわる意外なことを知りました。ある美術展で、マロニエの木を描いた絵を見ていた時、解説に「マロニエは日本のトチの木である」と書いてあるではないですか。あの、パリの並木でおなじみのマロニエが、モチモチの木の仲間だったとは(マロニエはセイヨウトチノキと言うらしいです)。