「勉強系の虐待というか、おかしなことが起こったのはやっぱり高校受験が見えてきたあたり。中学2年生のときに塾に入れてもらったけど、やっぱり偏差値72の県立A高校に絶対に行けってなった。A高校は学区外、自宅よりも母親の実家に近い。母親のなかでは実家に居候をさせて、その頭のいいA高校に行かせるって計画をしていました。でも、A高校は学区外からは定員の5パーセントしか入学できない。その狭き門を目指したけど、学力は問題なくても、内申点が微妙だった。体育ができないので、どうしてもオール5みたいなことにならなかった。それで学区内のトップ校のB高校にしなさいって先生に強く言われて、それでB高校を受験することになったんです」

 B高校の偏差値は68。東大進学者も数人出している。

「志望校がB高校に決まった三者面談の帰りに母親とタクシーに乗ったんだけど、『お前には裏切られた。A高校以外は高校じゃないから、恥ずかしくて誰にもお前のことを話せない。本当に裏切られた。お前みたいな子どもを生むんじゃなかった』みたいなことを言っていました。B高校をクズとか言うのはおかしいと思ったし、母親は商業高校中退、父親の出身高校はB高校より偏差値が15以上も下なのに」

 それから必死に勉強してB高校に合格した。報告に行ったとき、母親は「情けない。 A高校以外はゴミ、恥ずかしい」と晃子さんに言ったという。

 B高校は優秀な生徒ばかりだった。中学校時代のようにトップというわけにはいかなかった。A高校以外はゴミという意見を崩さない母親は、高校生になってからは国立大学の医学部に進学することを晃子さんに課した。

「高校時代に父親がリストラされ契約社員になっちゃって、家の収入が激減した。国立大学の医学部は塾に行かないと無理だから、家が貧乏な状態のなかで塾には行きました。母親は健康状態が悪いので働けない。タバコの吸いすぎで肺がおかしかった。そんな状況だったけど、母親の強い要望で無理して塾に行くことになったんです」

 母親は塾代がかかる晃子さんに対して、「お前はお金ばかりかかる」「金食い虫」「こんなにお金をかけて医学部に行けなかったら、お前は生きる価値がない」と口癖のように言いだした。