共働き家庭の一般化や、少子化が進んだ昨今。子どもに無関心過ぎる親、過放任な親、過保護・過干渉な親が散見される一方、下の子や老親の世話、手伝いの範疇を超えた家事労働を強要する親が目につく。こうしたケースの中には、親の意識の有無に関わらず、「子どもは親の所有物」と勘違いしている場合もある。「あなたは子どもの子どもたる時間や居場所を奪っていませんか」(ノンフィクションライター・グラフィックデザイナー 旦木瑞穂)
「何をするか分からない怖さ」を持った父親
夫婦仲も家族仲も良好だったが…?
関東在住の露木実湖さん(仮名・20代・未婚)の両親は、造園業を営んでいた父親が、製造業の会社で働く母親の職場に仕事で訪れたことをきっかけに出会い、1年半ほどの交際を経て、27歳と23歳で結婚。約1年後に露木さんが長女として生まれ、その2年後に次女、さらに9年後に三女が生まれた。
父親は怒ると何をするか分からない怖さがあり、気に入らないことがあると突然殴ってきたり、見ていたテレビの音量を最大にしたり、わざと大きな物音を立てたりした。
それでも、露木さんがたまごっちを欲しがったときは、朝早くから並んで買ってきてくれたこともあり、妹が生まれた時は、母親が相手にしてくれない寂しさを紛らわすために、いろいろなところへ連れて行ってくれたりする優しさもあった。
一方母親は、ユーモアがあり、世話好きな人だった。
夫婦仲も家族仲も良好で、度々家族で外食や旅行に出かけていた。
ところがそれも、上の妹が産まれて2年経つくらいまでのこと。
露木さんの上の妹は、2歳になっても言葉が話せず、あやしても一度も笑ったことがないことに気づいた母親が近所の小児科を受診したところ、県外の大きな病院を紹介される。検査を受けると、重度の知的障害と自閉症があると判明した。