価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になってくるのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。
なぜ、過去のヒットした事例を収集するのか?
今回は、私が頻繁に使っているオリジナルのアイデアシートをご紹介します。これは、以下の2つのことに機能するものです。
ひとつは、すでにお話ししたようにヒットした事例に学び、言語化することで、アイデアをつくるための筋力を鍛えるためのものです。
もうひとつが、同じフレームワークを使い、何かしらの問題解決に資するアイデアを生みだすというものです。
これをシート化したものを「アイデア分解構築シート」と呼んでいます(下図)。
事例の勉強をするときも、アイデアをつくるときも、同じフレームワークでできるというところに、このシートのよさはあると考えています。
どう応用可能なものに落とし込めるか
まず、ひとつ目の事例を分解して分析するときの使い方から説明します(やや説明が長くなるので、今回だけで、その全部を説明することはできません)。
アイデア発想の筋力を鍛える意味でも、過去にヒットした事例を収集することは大切です。
私は、現在も事例の勉強はコツコツ続けていますが、そのときに「(この前例を)どう応用可能なもの」にするのか、という視点を持ちながら事例を学ぶべきだと思っています。つまり、ただ事例を知っているだけでは、意味はないのです。
そういうわけで、私は、ヒットした広告や作品等について、このシートにいいアイデアだと思った事例を落とし込んでいきます。このシートにはアイデアを構造的に把握するために、上記のような6つの空欄を設けています。
もちろん、すべての人にとってこのシートが使いやすいものではないと思いますので、こちらをベースにしながら、自分にとって使いやすい形にアレンジしていただければ結構です。
(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。