EV(電気自動車)シフトがグローバルで踊り場に来ていると言われる中、韓国ヒョンデ(現代自動車)はハイエンドブランド「N」の訴求を加速している。その筆頭であるハイパフォーマンスカー「IONIQ5 N」をサーキットと公道で走らせた。すると、同EVの予想を超えた独創性が見えてきた。日系メーカーが学ぶべき点とは。(ジャーナリスト 桃田健史)
圧倒的な動力パフォーマンスに圧倒されるも
乗り心地まで良い!
「これがいま、日系メーカーのEV(電気自動車)開発で足りないことだ」
ヒョンデ(現代自動車)IONIQ5 Nをサーキットおよび公道で試乗し、ヒョンデ韓国本社の関係者と意見交換して、そう感じた。
それは単なるEV技術論ではなく、EVを通じて未来のクルマの楽しみ方を考えるという「ピュアなやる気」である。
ハイパフォーマンス系のEV領域には事実上、先行事例となるベンチマークがなく、そこへヒョンデが果敢に挑戦している。そんな彼らの表情が実に楽しそうなのだ。
むろん、次世代事業の中核を成すEV開発に向けては、ヒョンデ上層部からプレッシャーは相当大きいと想像できる。その上で、開発陣が萎縮せず、積極的に新しいアイデアを目いっぱい盛り込む姿勢を貫く心意気が、取材するわれわれにも強く伝わってくるのだ。
直近では、米カリフォルニアとスペインのバルセロナで、それぞれ100人を超えるジャーナリスト向けにIONIQ5 Nのサーキット試乗会を行い、好評を得たという自信もあるのだろう。
一方、日系メーカーの場合、EV開発に対して「生真面目さ」が強過ぎる印象がある。
例えば、ハイパフォーマンス系EVは、日産のNISMOがあるが、内外装デコレーションやサスペンションチューニングが主体で、爆発的な出力を誇るような商品はまだない。
また、ハイパフォーマンス系のみならず、日系メーカー各社のEV開発は次世代電池を筆頭とする技術論が先行しており、エンジニアたちがユーザーの心に刺さるような「本質的な遊び心」を持つ余裕がないようにも感じられる。
次ページでは、IONIQ5 Nはどんな乗り味なのかを紹介していこう。