「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』の中で著者・森武司氏が「僕に足りないものをみんな持っている」と述べたのが中川裕貴氏だ。現在FIDIA(フィディア)のNo.2であり、Luvir Consulting(ルヴィアコンサルティング)のCEOとしても活躍する中川氏は、FIDIAの年商を60億円から100億円へに引き上げたレジェンドでもある。中川氏は「どんな仕事より最優先すべきこと」があるという。それは一体何か。中川氏にじっくり話を聞いた。(構成:陽月よつか)
役員会で話していること
――FIDIAは役員会をとても大切にしているということですが、どんな場なのでしょうか?
中川裕貴(以下、中川):FIDIAの役員会は総勢8名、月イチで開いています。
基本的にオープンディスカッションです。毎回議題は決めますが、とことんオープンに話をするんです。といっても、各事業ごとの詳細な数字や戦略的な話はしません。大半は、人や組織の話です。
というのも、僕は事業戦略は僕ら役員ではなく、外部のコンサルタントでも描けると思うんです。外部の人を入れ、「一緒に戦略をつくってください」でいいわけですから。
一方、組織をつくることは、組織の中にいる人にしかできない大切なことです。だから役員会では、そこに時間を費やします。
――戦略よりも、組織づくりが大切なんですね。
中川:そうです。いくら正しい戦略をつくっても、それを実行するのは人や組織です。人や組織がガタガタしていたら、どれだけいい戦略をつくっても絵に描いた餅。そうならないためにも、人や組織を盤石なものにすべきなのです。
役員会で実際に話していることといえば、「誰をどこに配置したらこの事業が伸びるかか」「こんな戦略を実現したいが、どんな人をアサインすればいいか」「どの会社にどの会社をぶら下げるか。そのときに誰をマネジメントするか」「では、こういう方向性でやりましょう」など、人と組織の話ばかりしています。
「仕事より役員会を最優先に」と伝える理由
――中川さんは役員のみなさんに、「他の仕事より役員会を最優先にすべき」と伝えていると聞きました。本当ですか?
中川:まさしく、そうです。というのも、会社の中心である役員同士のコミュニケーション頻度がすごく大切だと思うからです。
役員間のコミュニケーションが希薄になると、事業間のコミュニケーションも希薄になるからです。
そうならないためにも、役員同士でしっかりコミュニケーションを取る必要がある。これが役員会の大きな目的なんです。
役員の仲のよさ=その会社そのものの強さで、結束力や団結力につながる。役員みんなが同じ方向を向き、各事業を伸ばしていたら、その下で働く事業責任者やスタッフたちも、よし頑張ろうという気持ちになるんです。
――役員同士の仲のよさが、会社全体の空気感に影響するんですね。
中川:そうです。だから、役員会はすべての仕事に優先すると伝えています。
もっというと、僕は役員会よりその後の食事会のほうが大事と思っています。
ですから、「どうしても役員会に欠席するときでも、その後の食事会だけはきてくださいね」と役員のみんなに伝えています(笑)。
というのも、表面上の仲のよさなら昼の役員会でもつくれますが、役員の間ではもっと深いところで仲のよさを育みたいと考えているんです。
ビジネスもプライベートも垣根なしの根底にある、人間としての親愛のようなものを育むために、食事会は必要だと思っているんです。
食事会でプライベートな部分も含めオープンに話せる関係をつくっておけば、いつでも仕事の相談はしやすくなり、役員同士のコミュニケーションも取りやすくなりますから。
――深いところでの仲のよさが、まずは大切だと。
中川:はい。役員のエンゲージメントの高さは、その事業の熱量につながると思うんです。
ただ、役員会の後に食事会をやれば、どんな会社でもうまくいくというわけではないと思います。それだけですぐ仲よくなるものではない。
僕らがうまくいっているのは、社長の森さんや他の役員たちの寛容さが大きいと思っています。
役員の中では僕と中嶋が一番年下なのですが、僕らが発言しやすい空気を演出してくれるんです。
これは本当にありがたいですね。僕が何一つ遠慮せずに意見を言えるのも、そういう関係を築けているからです。
その分、文句も飛んできます。
役員会後の食事会は僕が毎回予約していますが、「あの店はイマイチや」「またここ~?」など、みんな容赦ないです。
――森さんの初の著書では中川さんは会社のNo.2と紹介されていますが、役職は影響しないのでしょうか?
中川:まあ、僕がCOOだからだと思いますが、あまり意識していないですね。
たまたま僕の場合、会社から任された役割が全体の組織づくりや全事業の数値管理だっただけです。僕の中ではどの役職も同等で、序列はないと思っています。