王子絡みのドタバタ劇は「香港の名声を傷つけた」として
スクープしたメディアが国家安全条例で罰せられる?
中東に詳しいある香港人投資家は、「だからなんだ? 王子は香港から1ドルもだまし取ってはいないじゃないか」と、こうした疑問の声に反論した。
だが、一方ではある金融投資家が、「だいたい、ファミリーオフィスというのは自国の税制を避けて海外に資産を移すためのもの。堂々と顔出しし、それを吹聴して回る王族などいないはずだ」と論じている。
この先事態がどうなるかはまだ分からないが、このドタバタ劇は間違いなく、香港の世界的金融都市としての名声を傷つけたという指摘も金融関係者から出ている。
政府は知らぬ存ぜぬを通しているが、一部では報道を受けて政府が王子のオフィス開幕式の出席者を財政長官からファミリーオフィス推進署トップへと引き下げたことが王子の不興を買い、帰国を決めるきっかけになったとするうわさも流れている。
さらにSCMPは一連の報道後、「複数の匿名政府高官」から「(メディアによる身元調査が)海外投資家を不快にさせ、香港の投資環境を不利におとしめた可能性がある」とするコメントを受けたと伝えている。記事には書かれていないものの、それはまるで、施行されたばかりの国家安全条例の適用を匂わせた脅しのようにも聞こえなくはない。
いったい、5月にドバイ王子ファミリーオフィスの開幕式は行われるのだろうか? だが、最終的に開幕してもしなくても、香港政府のチェック能力の不足ぶりが事件で暴露されたことで、香港の国際金融センターとしての評判にケチがついてしまったのは間違いないだろう。