「新しい資本主義」が大スベり、賃上げは大企業止まり
「春には、春闘があります。近年、賃上げ率の低下傾向が続いていますが、このトレンドを一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待します」(首相官邸ホームページ、22年1月17日)
今からおよそ2年前、「聞く力」のアピールで、当時は内閣支持率57%(NHK世論調査)と人気絶頂だった岸田文雄首相は、国会の施政方針演説でそのように語っていた。ただ、今にして思えば、この時が「終わりのはじまり」だったのかもしれない。
岸田首相が得意満面で「一気に反転」とぶちまけたこの時から、実質賃金はなんと23カ月連続で減少していく。これだけ長期間におよんで国民が貧しくなっていく現象は、2008年のリーマンショックを挟んだ、2007年9月〜2009年7月以来のことだ。
では、なぜ岸田政権の「新しい資本主義」は、ここまで豪快にスベってしまったのか。
いろいろな意見があろうが、「敗因」のひとつはわかりきっている。「新しい資本主義」と言いながら、高度経済成長期に社会に定着した「古い資本主義」から脱却できなかったからだ。
具体的に言うと、日本経済の課題を解決していく上で、あらゆることで大企業を基準に物事を考え、大企業が変われば日本経済も変わっていくーーという「大企業中心主義」ともいうべき誇大妄想にとらわれてしまっていたのである。
その「病」を、これ以上ないほどわかりやすく示しているのが、先ほどの施政方針演説以降も首相が繰り返し訴えていた「春闘で賃上げトレンドをつくる」という言葉だ。
残念ながら、これは客観的な事実やデータとかけ離れた、「根性論」のようなものだと言わざるを得ない。