傲慢な経営者が陥りがち、「自分の思想を受け入れるべき」

 では、こういう“ダダ漏れ企業”にならないためにはどうすべきか。根本的なところを言わせていただくと、経営者が「社員ならば経営者である自分の思想を受け入れるべき」という傲慢な考え方を捨てることが重要だ。

 例えば、いなば食品の「謎ルール」の中に食事に関するものが多かったが、これは稲葉社長の思想が色濃く現れている。会社のホームページで稲葉社長は、「創業以来、全てのフードでの化学物資の無添加、無着色、保存料・殺菌剤一切なしを徹底してきました」と述べているが、それはビジネス的なこだわりではなく、若い時から大切にしてきた「人間」としてのこだわりでもある。稲葉社長は副社長時代、メディアで以下のように語っていた。

「食生活には人一倍気を配る。コーヒーは飲まず、添加物を多く含んでいそうな食品は避けるという」(日経産業新聞1994年3月7日)

 こういう「こだわり」を理解すれば、「謎ルール」は稲葉社長が心の底から信じている思想を、社員にも同じように受け入れてもらいたいという強い思いから作られたものだとわかるだろう。もちろん、それは「良かれ」と思ってだ。

 実際、同社のホームページで、稲葉社長が掲げる経営目的として「社員と社員の家族を物心両面で守る」ということを掲げている。安い焼き肉屋、カツ丼やハンバーガー、ファストフードの危険性を説いているのも、稲葉社長からすれば、「社員と社員の家族を守る」という親心からなのだ。