供述の「アニキ」から推察される犯罪の全容

 2つ目の特異な点は、「アニキ」の存在です。

 遺体損壊の容疑で逮捕された平山綾拳容疑者は、「名前は言えないが、アニキに頼まれ車や凶器を準備しただけ」(4月23日 FNNプライムオンライン)と供述している点もさまざまな憶測を読んでいます。

「アニキから頼まれただけ」という趣旨の供述をするということは、主犯は自分ではなく他にいることを示唆する発言です。

 通常、組織的な犯罪で末端の構成員が主犯の身代わりとなって出頭する際に、「自分がやった」と主張するものです。

 しかし、今回のケースでは、取り調べの早い段階から「アニキの指示」について供述しています。もし、暴力団やマフィアのような犯罪組織に所属している者ならば、出所後の報復が恐ろしくて「アニキ」の存在を匂わせることすらできないはずです。

 つまり、アニキに言及している時点で、組織の掟のようなものが通用していないことがわかります。私は平山容疑者は組織の人間ではない可能性が高いと見ています。

 末端の人間が指示は受けているけれども、組織に所属しているわけではないということは、匿名・流動型犯罪グループ、通称トクリュウが絡んでいる可能性も想定しなければなりません。平山容疑者は、いわゆる「闇バイト」の募集を通じて遺体の処理を引き受けたかもしれないということです。

 前述の通り、遺体を焼損させる行為は目立つので、それを実行した人間はほぼ確実に捕まります。「トカゲの尻尾切り」に使うなら組織の人間ではなく、闇バイトで募集すればいいということでしょう。闇バイトに応募してきた者であれば、組織まで辿りづらくすることができます。

 闇バイトで集められる人は、おそらく大元の依頼主である組織や人の名前を知らせずに動員することができます。中途半端に知り合いや子分などを動員してしまうと、警察の厳しい追及で口を割ってしまう恐れがありますから、匿名性の高い闇バイトを使うほうがむしろリスクが少ないと言うことができます。

「そこまでリスクが高い依頼を引き受ける人間などいるのか」と疑問に思われる方もいるかもしれません。しかし、トクリュウの象徴的な「ルフィ事件」でも、実行役は逮捕されるリスクを追ってでも強盗の依頼を引き受け、殺人まで犯していました。

 こうした過去の事例を考慮しても、逮捕されるリスクが極めて高い依頼でも人が集まってしまうことが証明されているのです。今回の平山容疑者が、同じような思考を持っていても不思議ではありません。