4月19日、金の先物価格が1トロイオンス当たり2413.8ドルで引けた。1970年代以降の最高値を更新したのは、中国とインドの個人および中央銀行が買い増したからとみられる。今後、金の価格がさらに上昇する可能性はあるのだろうか? (多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
金の先物価格が2400ドルを超えた!
2022年の夏場以降、「金」の価格が上昇している。24年に入ってからは2月中旬以降、金に向かう資金は一段と増加し、価格上昇の勢い(モメンタム)はさらに強まった。2月14日から4月26日まで、世界の金価格の指標であるニューヨーク商品取引所(COMEX)の先物価格は約17%上昇した。
金に投資する投資家の中でも、中国とインドの需要増加は顕著だ。00年代以降、両国は工業化による経済成長の影響で、豊かになった一部の人が宝飾品として金を購入した。そして近年は、中国やインドの中央銀行がインフレなどのリスク回避のため金の購入を増やしている。
ロシアやトルコなど他の新興国でも中央銀行などが金の保有を増やした。主要先進国でも、地政学、政治、経済(特にインフレリスク)の観点から、金への投資の重要性が増していると考える個人や機関投資家が増えている。ある意味、世界的にドルから金へのシフトが起きているともいえる。
直近では4月以降、金の先物価格が2400ドルを超えると、売り圧力が高くなる場面が増えた。目先では利益確定などの動きが増え、金価格に下押し圧力がかかることはあるだろう。ただ、短期間で中東情勢などのリスク要因が落ち着くかは不透明だ。米国の物価がどのように2%に向かうかも見通しづらい。世界経済を取り巻く不確定要素が増えていることから、長い目で考えると金価格にはさらに上昇の余地があるだろう。