中国とインドはなぜ金の購入を増やしているのか
4月19日、金の先物価格が1トロイオンス当たり2413.8ドルで引けた。1970年代以降の最高値を更新した。価格上昇の要因の一つが、中国とインドの個人および中央銀行が買い増したからとみられる。
伝統的に、中国とインドでは宝飾用に金を使うことが多い。経済成長に伴う富の増加や、社会的な地位を誇示するために、個人による金への購買意欲が盛り上がっている。
また、資産運用の対象をリスク分散するために、中央銀行や機関投資家が金を保有することも増えている。きっかけは、08年9月のリーマンショックだった。
米財務省とFRB(連邦準備制度理事会)は全米第4位の投資銀行、リーマン・ブラザーズ(当時)をうまく救済することができず、世界経済と金融は大混乱に陥った。中国、インド、ブラジルなど多くの新興国から、米国を非難する声が上がり、世界経済は多極化に向かい始めた。新興国の中央銀行は、ドルの価値が中長期的に不安定になることを懸念し、金の保有を徐々に増やした。
その後20年8月、中国では不動産バブルが崩壊し、不動産や株式の価格が下落した。財産を守るために、価値が安定している金を買い求める中国の富裕層が増えた。23年、中国の金宝飾品需要は10%増加し、延べ棒とコイン投資は28%も伸びたという。中国の景気低迷に対して警戒する世界の投資家は多く、それはインドにおける金保有動機を一段と押し上げた。
ウクライナ紛争が勃発すると、米国をはじめとする主要先進国はロシアに経済・金融制裁を発動した。中国やインドは、ドルに依存した経済運営のリスクをより強く認識したことだろう。それも、ドルから金へのシフトにつながった。