「異次元の金融政策」を標榜する、黒田東彦・日本銀行新総裁が鮮烈なデビューを飾った。

 白川方明・前日銀総裁から黒田・新総裁へのバトンタッチは、あたかも「白」から「黒」へと一気に局面が転換する「オセロゲーム」のようだ。

黒田日銀新総裁の鮮烈なデビュー<br />サプライズに満ちた「異次元の金融政策」<br />――大和総研チーフエコノミスト 熊谷亮丸くまがい・みつまる
東京大学大学院修士課程修了。1989年、日本興業銀行に入行。同行調査部エコノミスト、みずほ証券エクイティ調査部シニアエコノミスト、メリルリンチ日本証券チーフ債券ストラテジストなどを経て、現職。財務省「関税・外国為替等審議会」の委員をはじめとする様々な公職を歴任。過去に各種アナリストランキングで、エコノミスト、為替アナリストとして合計7回1位を獲得している。「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系)レギュラーコメンテーター。著書に『日経プレミアシリーズ:消費税が日本を救う』(日本経済新聞出版社)、『パッシング・チャイナ』(講談社)など。

 日銀に対して普段は辛辣な海外メディアの報道も総じて好意的である。英フィナンシャルタイムズ(FT)は「黒田が市場を急襲」「日本が金融革命を始めた」という表現で賛辞を送った。独フランクフルターアルゲマイネ・電子版も「天変地異が起きた」と報じた。

予想を上回る大胆な内容

 新生・黒田日銀が決定した金融緩和は、金融市場の事前予想を大幅に上回る大胆な内容であった。

 4月4日に、日銀は2年間で前年比+2%の消費者物価上昇率実現を目指す「量的・質的金融緩和」の導入を決定した。政策目標を従来の「金利(無担保コール翌日物金利)」から「マネーの量」に切り替えると共に、「マネタリーベース(資金供給量)」を2年間で倍増させる。日銀が市場から購入する国債の残存期間を長期化することに加え、長期国債や上場投資信託(ETF)などのリスク資産も大幅に買い増す。この結果、2014年末の日銀の資産規模は290兆円(GDP比59%)に倍増することとなる。