「『組織のパフォーマンスを最大化させるために、従業員が抱えるさまざまな事情は会社もサポートするよ』というメッセージが伝わらなければ、社員は休みづらいでしょう。特に、組織のリーダーがそうした価値観を率先して実行しなければ、従業員の意識を変えることはできません。突き詰めて考えると、組織の“文化”が鍵となります」

みんなが幸せになる
「お互い様」文化の育て方

 休暇やテレワークの制度はあるのに、「誰も使っていないから」とか「昇進に響くから」という理由で使えないというケースは少なくないだろう。

 前回記事で体験談を共有してくれた典子さんの事例でも転職先の会社について、「取締役が育休をとっている姿を見て感動した」と話してくれた。社員の「休みやすさ」には、リーダーの率先垂範が欠かせない。逆にリーダーが休暇制度やリモートワークを積極的に利用することで、従業員が子どもの都合を優先しても、「お互い様」として受け入れられる文化を醸成することができる。

 例えば、フランスでは個人が好きなタイミングでバカンスをとって、同僚に仕事を任せることが一般的だ。反対に同僚がバカンスに行く際はその人の仕事を引き受けることが当たり前に行われている。「お互い様」という意識がほとんどの従業員に共有されているうえに、業務の透明性が常に高い状態にあるので、突発的な休みでも仕事を引き継ぐことができている。

 従業員が一斉に休みを取る日本では、日常的に業務を任せたり、任されたりする機会が多くないだろう。そうした環境の中で、仕事を任されるだけで任せることができない人が、割を食っていると感じても不思議ではない。

 また、上原さんは”子持ち様”批判の対象が主に女性であることを指摘する。保育園の送り迎えや行事対応といった育児の負担が女性に偏っていることが、“子持ち様”批判を増長させることに繋がってしまっているという。

 確かに、夫婦で育児負担を均等に分担することができれば、それぞれの職場で早退や業務の引き継ぎで生じる同僚の負担も半分にすることができる。

「女性管理職を増やす」
だけでは解決しない

 さらに「育児負担が女性に偏重すること」と「男性が育児参加を妨げられること」は表裏一体でもある。育児に参加する男性が職場で受ける冷遇について上原さんは次のように話す。