育休から復帰してすぐに会社を辞めた2人の当事者が語る「会社を辞めた理由」。子育て社員を絶望させる会社の制度と文化とは?育休から復帰してすぐに会社を辞めた2人の当事者が語る「会社を辞めた理由」。子育て社員を絶望させる会社の制度と文化とは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

昨今、SNS上で盛り上がりを見せる“子持ち様”論争。育休を取得したり、育休から復帰後も職場を早退したりする子育て中の社員を揶揄するネットスラングだ。子育て中の社員が「子持ち様」として冷遇される組織と、安心して仕事と両立できる組織は何が違うのか。前編となる今回は、育休から復帰してすぐに会社を辞めた2人の当事者に「会社を辞めた理由」を聞いた。子育て社員を絶望させる会社の制度と文化とは。(取材・文/ダイヤモンド・ライフ編集部)

ワーキングマザーの出世は
「係長が関の山」

 都内で会社員として働く北原典子(仮名、32歳)さんは2児の母。23年4月に第2子(当時11カ月)の育児休業からA社に復帰したものの、わずか3カ月後の6月末にA社を辞めた。

 1歳の子どもを保育園に預けて復帰するためには、急なお迎えに対応できる在宅勤務や柔軟な勤務制度が不可欠だった。在宅勤務の制度自体はあったものの、利用できるのは妊婦と傷病者などに限られ、「幼児の親」は含まれていなかった。

 典子さんは、復帰後の働き方についてA社と相談することはなかったという。組織の文化として在宅勤務はネガティブに捉えられていて、「在宅は不便だよね」とか「みんな我慢して出社してるんだから」と考える人ばかりの中では声をあげられなかった。

 同じ部署の同僚に在宅勤務をしたいという人間は1人もいなかった。十数名の部署は、家のことをすべてパートナーに任せている男性ばかりで、女性も1人いたが子どもはいなかったという。

「言っても無駄だと諦めていました。それに、そこまでして仕事を続けたいとも思いませんでした」

 A社で根を張っていた残業文化も典子さんを失望させた。「残業代で稼ぐ」という考えを持つ人が多く、部署によっては、会社に捧げた時間が多い人ほど出世する傾向も見られた。復帰後、同僚が“会社に泊まった自慢”をしている様子を見て、失望を通り越して呆れた。

 A社におけるワーキングマザーの出世は、本社では係長、支社では課長が関の山だった。本社に女性管理職はいたが、40代の晩婚で子どもはいない。子どもが生まれた女性社員は、体感では「3割が辞めて7割が会社に残った」という。

 残った7割の人はより負担の少ない業務への配置転換がされることがあった。典子さんはこれを「お母さんがそんなことまでしなくていいよ、という“昭和的な優しさ”」と表現する。