「とっさの質問にうまく答えられない」「『で、結局、何が言いたいの?』と言われる」「話し方やプレゼンの本を読んでも上達しない」……。そんな悩みを持つ方は、言語化の3要素である「語彙力」「具体化力」「伝達力」どれかが欠けていると指摘するのは、文章や話し方の専門家であり言語化のプロである山口拓朗氏。本連載では、山口氏による話題の最新刊「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化大全」の中から、知っているだけで「言語化」が見違えるほど上達するコツをご紹介していきます。
「類似点・相違点は?」と考える
前回、言語化がうまい人は、「思考のものさし」に当てはめて、自分の考えを具体化しているとお伝えしました。
本書ではさまざまな言語化に役立つ「思考のものさし」を紹介していますが、今回は比較する対象を見つけて「類似点・相違点を考える」という「ものさし」を紹介します。
これは、唯一の答えがない物事の良し悪しを言語化する時に便利なものさしです。標題のようにポスターの良し悪しについての意見を求められたときなどに、「たとえば、○○と似ているところは? 違うところは?」と自問自答して導き出していきます。
たとえば、キーンとクールな使い心地がウリの目薬の、販促用のポスターを決める場合を想定しましょう。今日は最終ジャッジの日で、A案とB案の二者択一を迫られています。そんなとき、以下のように「なぜ→たとえばメソッド」と「類似点・相違点」のものさしを使って思考を具体化していきます。
「(ざっくり一言)A案がいいと思う→(なぜ?)クールな感じが伝わってくるから→(たとえばB案との類似点・相違点は?)類似点:タレントさんが目薬を手にしているところ。相違点:A案は差した直後の『くぅ~!』な状態。B案は商品を手に掲げた『どや!』な状態」
こんな風に類似点・相違点を洗い出すことで、「くぅ~! な状態だからクールな感じが伝わってきたのか」「どや! な状態はタレントさんの顔に目が行くから商品の印象が薄くなる」など、自分では気づいていなかった理由も浮き彫りにすることができます。
このようにA案が良いと思う理由を具体化して伝えれば、好き嫌いで判断しているのではなく、客観的に分析して良し悪しを判断していることが分かるので共感も得やすく「できる人」だと思われるでしょう。
他にも、「この主人公と私は、△△なところは似ているけど、□□なところは似ていない」という風に、自分を比較対象にすることもできます。物語を読んだ感想を伝えたい時や、第三者について語りたい時などにも重宝する「ものさし」です。
*本記事は、山口拓朗著「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化大全」から、抜粋・編集してまとめたものです。