“コミュニケーション不全”の解消が求められてる
ウィズコロナのハイブリッドワーク(出社勤務&リモートワーク)は、ビジネスパーソンのメンタルの好不調に影響を与えているようだ。山田さんは心療内科での勤務経験もあり、メンタルヘルスへの理解も深く、一家言を持っている。
山田 海外の企業では、そもそも、マネージャーはメンタルヘルスのリテラシーを高めなければならないと考え、メンタル不調者が出れば、業務上の配慮を十分に行いますが、日本では、相談窓口の設置、レジリエンス研修の推奨など、メンタル不調者個人の問題として処理する企業が多いです。
個人のメンタル不調を、いかに職場全体の問題として改善するか――たとえば、弊社は、「Carely」を導入している企業に伴走するかたちで、メンタル不調と職場環境との関係を示すデータを分析したうえで、ピンポイントな施策を個々の企業に提案しています。
「健康経営は急務だと分かっていながら、経営層がコミットしてくれない」「健康経営の施策を行っても成果が上がらず、何から手をつければいいか分からない」――そんな悩みを持つ、総務・人事担当者も多いようだが……。
山田 社内でうまくいかない場合は、経営層と総務・人事担当者、総務・人事担当者と従業員の間の「伝え方」に問題があることが多いです。心地よいと感じられる会話には、相手へのリスペクトがあります。「私はこう思うけど、あなたはどう思う?」と、自分の立場を明確にしたうえで、対等なコミュニケーションを図ることが大切です。そこには、決めつけや「どうせ分かってもらえない」といった諦めはありません。「伝え方」の能力を養うために、社内で簡単にできるのがロールプレイングです。役割を決めて、部下役の人が上司役の人に何かを相談するといったシチュエーションを設定し、演じていく。その様子をみんなで見ながら、「こういう言い方が伝わりやすいのでは?」とディスカッションするのです。
コミュニケーションの不全を見直しつつ、従業員一人ひとりの健康に関するデータを取り、何から始めるかを経営層と総務・人事担当者で考えていけば、少しは前進できるのではないか、と私は思います。