山田さんが考える、これからの時代の健康経営
解消されない人材不足、アフターコロナへの適応、地政学リスク、「金利のある世界」への転換など、企業を取り巻く環境は変化し続けている。山田さんは、今後の健康経営、そして、企業自体のあり方をどのように見ているのだろう。
山田 私は、「2000年あたりから、働く人の価値観が変わってきた」という実感を持っています。その大きな要因はIT化で、誰でも、瞬時にさまざまな情報を獲得でき、自分たちと同じ考え方、価値観の人を一気に集めることができるようになりました。働く人たちは、社外も含めて連携しやすくなり、会社は、従業員目線で物事を考える方向に変わりつつあります。
弊社は、かつて、「働くひとと組織の健康を創る」というビジョンを掲げていたのですが、2021年に「働くひとの健康を世界中に創る」というパーパスに変えました。「ビジョン」というものは、たいてい、会社が主語ですが、「パーパス」は、会社の存在理由を従業員目線で表すものです。いまの時代、多くの人は、「社会課題の解決にコミットしている企業が好ましい」と考え、自分もその活動にコミットできることに働きがいを感じます。そして、社外へのメッセージと実状に乖離がないかを気にする人も増えています。その見極めとなるのが、健康経営マークの取得や、ESGの「S」にあたる活動であり、「社会に対して、何をどう行っているのか」を正しく発信し続けることが、各企業には求められています。
また、今後は、会社単体の健康経営にとどまらず、サプライチェーン全体の健康経営も必要になってくるでしょう。中小企業なら、取引先に選ばれるためにも、健康経営を実施せざるを得なくなる。その実現によって、社会・従業員・株主・消費者といった、あらゆるステークホルダーの理解が深まっていくはずです。