各種のデータがプラットフォーム別に分散している

 働き方も、働く人の属性も多様化するなかで、データをどう管理すればよいか――そこにはどのような問題があるのか。

山田 かつては「男性」が中心だった働く人の属性も、女性の増加はもちろんのこと、高齢者・外国人・LGBTQ+・障がい者などさまざまとなり、雇用形態も多岐にわたっています。属性の違いは、足し算ではなく、掛け算になるということを知っておきたいですね。

 たとえば、企業として「禁煙」に取り組む場合、喫煙する従業員に「喫煙中」というフラグを立て、さまざまな角度からのアプローチ方法を試せるようにする。個々人の多様な特徴をタグとして、データに付与していくのです。タグをできるだけ細分化することが重要であり……ただ、タグは“変化するものを捉えきれない”という欠点もあります。データの時系列な変化を分析するためには、AIなどを活用していくことになるでしょう。

 また、日本の企業は、健康情報は「Carely」を、勤怠管理はA社のシステムを、タレント・マネジメントはB社、経理はC社……と、複数のシステムを併存させるのが一般的ですが、単一のプラットフォームで管理できれば、「退職した○○さんは、こういう勤怠で健康状態を悪くした」といった分析ができるようになります。データがプラットフォーム別に分散しているせいで、分析や活用が思うように進まないことも大きな問題だと私は見ています。

 さらに、別の問題もあります。それは、グローバルと国内とでは、健康に関する情報のとらえ方が違うということ。健康経営は、アジア独特のものであり、欧米では、健康診断の結果はプライバシーに関わるので、会社側は把握しないのが一般的です。そうしたグローバルな姿勢と、自社の健康経営に整合性を持つことも必要となります。