タイで「ピックアップトラック」の
需要が高いワケ
まずは前提知識として、ピックアップトラックの特徴と、タイで需要が高い理由をお伝えしておきます。
ピックアップトラックは屋根のない荷台を持つ小型トラックで、シートが1列の「シングルキャブ」、シートが2列の「ダブルキャブ」などに分かれます。シングルキャブでありながら、シートの後ろ側に荷物を載せる空間がある「エクストラキャブ」も存在します。
タイでピックアップトラックの需要が高い理由は、主に三つあります。
一つ目は道路事情です。タイでは、首都バンコクのような都市部や沿岸部は道路が整備され、高速道路も普及しています。一方で、東北の山岳部では未舗装の道も多く、乗用車では走行できない荒れた道も存在します。ピックアップトラックは、そうした「悪路」の走破性が高いことから重宝されているのです。
二つ目は気候です。雨の多いタイでは、大雨のときなどに「道路冠水」が頻繁に起きます。しかも、なかなか解消されません。タイにはチャオプラヤ川という大きな川が流れていますが、バンコクと、その約100キロ上流にあるアユタヤの標高差はわずか2メートル。平地が多いため、雨水が海に排出されるのに非常に時間がかかるのです。
そうした状況下で、冠水を気にせずに移動できる「車高と安定性」のあるクルマといえば、やはりピックアップトラックになります。
三つ目は、ピックアップトラックの汎用性の高さです。シングルキャブやエクストラキャブは、業務用だけでなく乗用として使われることも多いですし、荷台に人が乗ることも頻繁にあります。本来であれば、日本と同じく荷台への乗車は違法なのですが、タイで取り締まられることはまれです。
合法的に荷台に乗れるよう、ピックアップトラックをベースに改造した乗合バス「ソンテウ」という乗り物もつくられています。こうした慣行からも、タイではピックアップトラックが必需品となっていることがわかります。
さて、今回のBIMSでは、こうしたピックアップトラックの出展が目立ちました。中国・日本・ベトナムのメーカーが出展した最新車種を、写真付きで見ていきましょう。