タイは「日本車王国」というイメージが根強い国でした。しかし、それも今は昔。最近のタイでは、必ずしも日本車が大人気というわけではありません。その代わりに、政府の優遇策の効果もあって「中国ブランドのEV」が急速に普及しています。その実態をお届けするべく、バンコク国際モーターショーで展示されていた中国EVの中から要注目モデルを紹介します。中には「急速充電可で230万円」の激安モデルや、わずか1.9秒で100キロに加速するスーパースポーツカーも――。(モータージャーナリスト 諸星陽一)
※外部配信先では写真をすべて閲覧できないことがあります。その場合はダイヤモンド・オンライン内でお読みください。また、本企画は前後編となっています。タイでのEVトラック事情を解説した後編『テスラだけじゃない…タイで「EVトラック競争」勃発!いすゞが打ち出す秘密兵器とは?』はこちらからご覧ください。
日本車の牙城が崩れたタイでは
「中国EV」が大人気!?
皆さんは「タイの自動車事情」についてどんな印象をお持ちでしょうか。日本車の需要が高く、古めのトヨタ車やホンダ車が都市部・農村部を走り回っている――。そんなイメージを抱いている人が多いかもしれません。
ですが、最近のタイでは必ずしも「日本車が圧倒的優位」というわけではありません。実は今、日本車の需要が失速しつつある一方で、中国ブランドの電気自動車(EV)などが勢力を拡大しているのです。
そうした動向の一端は、タイで毎年開催される「バンコク国際モーターショー(BIMS)」のブースをウォッチすれば掴めます。今年のBIMS(第45回)は3月25日~4月7日の14日間にわたり、バンコク郊外で開催されました(※)。
※3月25日はVIP&プレスデー、26日はプレスデーのため一般公開はなし。
今回はモータージャーナリストの筆者がBIMSを取材して分かった、タイで人気を得ている「中国系EV」の実例をお届けしていきます(本稿は前後編の前編。タイでのEVトラック事情を解説した後編はこちらから)。
まずは、タイにおけるモーターショーの基礎知識からお伝えします。
タイでは年に複数回のモーターショーが開催されますが、BIMSは最大規模のものです。このBIMSは、日本のジャパンモビリティショー(旧名称:東京モーターショー)などとは大きな違いがあります。
日本のモーターショーは、自動車メーカーおよびサプライヤーが発売前の新モデルや先進技術を展示し、来場者に「未来を夢見させる場」となっています。ですが、その場での売買は事実上禁止されています。
一方、BIMSでは単にこれらを展示するだけではなく、来場者がその場でクルマの売買契約を結ぶことができます。言うなれば、「今すぐ夢を叶えられる場」となっているのです。
あくまで筆者の想像ですが、もしかすると日本のモーターショーでも、展示ブースの裏や2階に設けられた個室でこっそりと商談が行われている……かもしれません。ですが、来場者がそこで堂々とサインや押印をするのは難しいでしょう。
しかしBIMSでは、展示ブースの裏に商談スペースが設けられていて、その場で堂々と商談をし、気に入ったモデルの購入予約ができます。そのため、予約状況やブースの人気度を追っていくと、タイで注目度の高い車種がおのずと見えてくるというわけです。