「仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつ、マネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
警戒心を抱く目上の人
への効果的な配慮
若いころはやんちゃだった人が、年齢を重ねるにつれて性格が丸くなり、周囲の誰にでも気をつかうようになることがあります。
私がコンサルティングをするクライアント企業でも、中高生のころは素行不良だった人が、会社に入って実績をあげて経営幹部となり、経営者には頼られ、部下にも慕われているようなケースを目にしたことがあります。
伊達政宗の人生やこうした経営幹部を見るにつけ、目上の人とうまくやっていくための心構えが導き出されます。
人間の感情は
理屈で解決できない
「目下の人間の成功で警戒するなんて、なんて心が狭いのか」と思われるかもしれません。
しかし、残念ながら人間の感情は、理屈で処理できるものではありません。
実績をあげて出世するほど、目上の人から頼りにされつつも、自分を追い抜くのではないかと警戒されることもあると自覚する。
表面的に賞賛していても
内心に警戒心が潜む
実績や成功が大きいほど、警戒心も大きくなるものです(小さいものであれば、警戒しません)。
表面的には賞賛していても、「自分が追い抜かれるのではないか」と焦りを感じるものです。
豊臣秀吉や徳川家康も、伊達政宗が若いころに短期間で南東北を統一していたため、「いつかまた天下とりを狙うのではないか」と警戒していたと考えられます。
橋を渡るときでさえ
確認をとる
目上の人からの警戒をやわらげるには、報連相(報告・連絡・相談)を欠かさず、日ごろからランチや会食などでのコミュニケーションをとることも効果的です。
ごく基本的なことですが、まめに報連相すると、仕事を円滑に進められるとともに、目上の人に「ちゃんと自分を立ててくれているな」と実感してもらえるのです。
政宗も、秀吉時代の気苦労で懲りたのか、江戸幕府に対してはまめに報連相していました。橋を渡るときでさえ、幕府に確認をとっています。
コミュニケーションと
報連相の好循環
また、報連相が円滑に進むように、幕臣やほかの大名との会食などを数多く開いています。
私の周囲でも、目上の人とうまくいっている人は、ランチや会食も含めてまめにコミュニケーションをとっている印象があります。
こうしたコミュニケーションが報連相を円滑にして、好循環を生んでいるのです。
実績を積み重ねつつ
気遣いも欠かさない
報連相などにより警戒をやわらげることは大事ですが、目上の人に遠慮して仕事で力を発揮しないのでは本末転倒です。
目上の人も、その人が実績をあげるから警戒しつつも、一目置いているのです。それがなくなれば、単なる目上の人に対するおべっかでしかありません。
政宗も、江戸幕府への報連相をまめに行いつつ、仙台藩の新田開発は手を抜きませんでした。
そうした実績を積み重ねたからこそ、仙台藩は100万石の実力で、江戸時代の265年間を生き続けたのです。
1 実績をあげて成功するほど、目上の人から警戒されることを自覚する
2 目上の人への報連相(報告・連絡・相談)を欠かさず、食事や飲み会などのコミュニケーションも大事にする
3 目上の人をケアしつつ、精いっぱい力を出して実績をあげ、成功し続ける
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。