経済的に恵まれない母子家庭に育ち、高校・大学は奨学金を借りて卒業。そのため、1000万円に迫る“奨学金という名の借金”を背負うことになった。そこで、郷里に母を残して上京、東京国税局の国税専門官となった。配属を希望したのは、相続税調査部門。「どうすればお金に悩まされずに済むのだろう?」と考え「富裕層のことを知れば、なにかしらの答えを得られるのではないか?」と思い至ったからだった。国税職員のなかでも富裕層が相手となる相続税を担当するのは、たった1割ほど。情報が表に出てくることはほとんどない。10年ほど携わった相続税調査で、日本トップクラスの“富裕層のリアル”に触れた『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者が、富裕層に学んだ一生お金に困らない29の習慣を初公開する!
※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
100億円超の申告は
東京に集中している
日本でいちばんお金持ちが住んでいるのは、やはり東京都です。
令和元(2019)年度の相続税申告状況を見ると、課税価格100億円超が日本全国で17件あり、そのうち11件が東京国税局の管内を納税地としています。
また、総務省による「平成26年全国消費実態調査」のなかでは、都道府県別の1世帯あたりの保有資産が掲載されています。
1世帯あたりの保有資産トップ5
この調査では、世帯あたりの資産が最も多いのが東京都、次いで神奈川県、愛知県と続きます。
①東京都(6058万円)
②神奈川県(4518万円)
③愛知県(4488万円)
④埼玉県(3813万円)
⑤奈良県(3713万円)
平均遺産額のトップ5
さらに東京都内で比較すると、昔ながらの高級住宅地に、今なお多くの富裕層が住んでいることがわかります。
私は東京練馬区の税務署に勤務したことがありますが、石神井公園の周辺は大きな邸宅が並んでおり、はじめて訪れたときは高級住宅地ならではの静寂感に驚きました。
以下は、東京国税局の公開情報をもとに、税務署ごとの被相続人1人あたりの平均遺産額のトップ5を示したものです。これらの税務署の管轄地域には、麻布や松濤、田園調布など日本有数の高級住宅地が含まれています。
①麻布税務署:港区のうち麻布、赤坂地区
②麹町税務署:千代田区のうち麹町地区
③渋谷税務署:渋谷区
④芝税務署 :港区のうち芝地区
⑤雪谷税務署:大田区の調布地区
住む場所と収入の相関関係
このように地域差が生まれる理由は、地価の差によるところも大きいですが、やはり都会ほど資産を築きやすいという面があると思います。
米カリフォルニア大学バークレー校のエンリコ・モレッティ教授は、住む場所と収入の相関関係を次のように説明しています。
「厚みのある労働市場に身を置くことが働き手の収入におよぼす好影響は、専門職の場合とくに大きく、その効果は過去三〇年を通して拡大してきた。今日のアメリカでは、働き手の数が一〇〇万人以上の土地で働いている人の平均賃金は、二五万人未満の土地の約一・三倍以上だ(この点は、働き手の就業年数、職種、その土地の人口構成の影響をとり除いても変わらない)」『年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学』(エンリコ・モレッティ著、安田洋祐解説、池村千晶訳より引用)
コロナ禍を経て
軽井沢への移住が増加
2020年にはじまったコロナ禍により、東京を離れて生活をする人が増えたことがニュースなどでとり上げられました。
実際、東京から別荘地で有名な長野県の軽井沢への移住者が増えており、軽井沢の地価は上昇しています。
ここで、「東京の地価が落ちる」と考える人がいるかもしれませんが、結果的にそのようなことは起きていません。
不動産鑑定士が教えてくれた
「お金持ちの鉄則」
私が2022年の夏に不動産鑑定士の方から聞いた話によると、昨今の軽井沢の地価上昇は、コロナ禍を受けて、おもに東京に住む富裕層が軽井沢の物件を購入しているからだそうです。
そうした富裕層は軽井沢に移住しながらも東京の物件を手放さず、賃貸や親族の居住用に活用しているとのことでした。そのため、東京の地価が落ちなかったというわけです。
不動産鑑定士の方は、「優良資産は手放さないのがお金持ちの鉄則ですから」とおっしゃっていましたが、富裕層が支えている東京の強さはなかなか揺るがないようです。
※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。