京都府京丹後市は
なぜ長寿地域なのか

 そして、発酵性食物繊維の摂取は“長寿”とも関わりが深い、と内藤氏。

「私は長年、長寿地域として有名な京都府京丹後市で、長寿研究を行っています。ここに住む65歳以上の人々は、ほかの地域に住む高齢者よりも健康な人が多く、彼らの腸内には短鎖脂肪酸の一種・酪酸菌という腸内細菌が多く生息していることが判明しました。酪酸菌は、免疫力の向上や、さまざまな疾患の予防に役立つ腸内細菌です。また、京丹後市の人々の食生活は、発酵性食物繊維を多く摂るという特徴があり、彼らの食事が腸内細菌に大きく影響していると考えています」

 京丹後市に住む高齢者のうち、116人が100歳を超え、その割合は、全国平均の約3倍にのぼる(2023年9月1日時点)。それだけでなく、加齢とともに筋肉量が減少する「サルコペニア」や、活力が低下する「フレイル」に悩む高齢者も少ない、と内藤氏は話す。京丹後市の調査から、発酵性食物繊維の摂取が“健康寿命の延伸”にも関わっている可能性も示唆されているという。

 食べれば、さまざまなメリットが得られる食物繊維だが、内藤氏おすすめの食材は何か?

「豆類や海藻類は、意識的に取り入れましょう。食物繊維はもちろん、海藻はミネラル類、豆腐や厚揚げなどの大豆製品は植物性タンパク質も摂れる一石二鳥の食材です。そのほか、高い発酵性が認められ、酪酸菌の産生を促す『グアーガム分解物』が含有されているグアー豆にも、豊富な発酵性食物繊維が含まれています。ただ、グアー豆そのものは、なかなか手に入らないので、健康食品や市販のドリンクなどの加工品で摂るのが現実的です」

 また、自身の体質に合った食材選びも重要とのこと。人によっては、腸活のために食べていた食品が、お腹の調子を崩す原因になるケースもあるという。

図表:食物繊維マッピング2024「ひと口に食物繊維といっても、それぞれに特徴と効果が異なります。すべてを把握するのは難しいですが、便秘や腸活などある程度目的に合った食材を選んでみてください」(内藤氏) 画像提供:太陽化学株式会社 拡大画像表示

「『オリゴ糖』をはじめとした『FODMAP』と呼ばれる“発酵性の糖質”はおなかにやさしいとされていますが、発酵性の糖質が吸収されにくい体質の人もいて、FODMAP食品を摂ると下痢などの不調を招くリスクがあります。もしもヨーグルトや納豆を食べてもお腹の調子が改善されない、という場合は医師に相談してください。ちなみに、先述のグアーガム分解物は、便秘と下痢の両方の改善が期待できる成分なので、腸内環境改善のファーストステップにも適しています」

 下痢や便秘の放置は、労働生産性の低下だけでなく、生活の質も低下させる。おなかの不調を軽視せずに医療機関を受診しよう。