しかし、これは少し考えれば「共同親権」の問題とは異なることがわかる。

 単独親権のもとでも、離婚した夫婦であっても状況に応じて育児を分担している親はいるし、親権を持たない親が子どもと面会しているケースはいくらでもある。現行の単独親権でも、話し合いの上で「共同養育」「共同監護」を行うことは可能だ。いわゆる「高葛藤(意思疎通に著しく問題を抱える関係)」の夫婦/親子でも、裁判所に「面会交流」を申し立てることで子どもと面会が叶うことは多い。

裁判はDVを見抜けるのか?
人材不足で「パンク状態」の指摘も

 共同親権下では、子どもの進学や手術、あるいは引っ越しや転校など諸々のことに父母両方の話し合いや了解が必要となる(もちろんこれまでの単独親権下において、離婚した親同士が子どもの進路を話し合うことはあった)。共同親権に反対する人たちが懸念しているのは、高葛藤のケースにおいてこういった「話し合い」が果たして順調に行われるのかという点である。

 話し合いを引き延ばすような嫌がらせをされたり、子どもの重要な進路の相談を取引き材料にされたりすることがあるのではないか。反対派から聞こえてくるのは、共に子育てができないから離婚したのに、共同親権によって半ば強制的に話し合いの席につかせるのはなぜなのか……という声である。

 改正法では、DVや虐待がある場合は裁判所が介入して単独親権となるとされているが、証明しづらい被害であるDVや虐待の認定を裁判所が果たしてどこまでできるのかという問題がある。また、家庭裁判所の実務は人員不足でパンク状態であることも案じられている。

 今回の改正では、「法定養育費」の創設が盛り込まれた。これを改正のメリットと挙げる人もいる。日本は他国に比べて養育費の支払い率が低いからだ。しかし、支払い率の低さは養育費を支払わない親に対する刑罰がないことが原因であり、新制度では最低限の支払いが義務付けられたとはいえ、どこまで効力があるかわからない。共同親権よりも養育費の問題が先ではないのかという声は大きい。