外側からではわかりづらい
「共同親権」による危険
野田氏は前述の東京新聞記事の中で「この将来を左右する重大な法案なのに、多くの国民はもとより、国会議員もほとんど法案の中身を知らなかった」と話している。
「共同」という言葉の響きから、「単独より共同の方がいいだろう」「子どものことを考えれば、離婚しても親2人がどちらも責任を持つ方が良いだろう」といった印象を持った人もいるかもしれない。
しかし前述した通り、子どもの養育にどれだけ関わるかは「共同親権」の問題ではなく、単独親権下であっても話し合いのもとに共同養育を行っている親たちはいた。「共同親権」を導入することによって起こるのは、高葛藤の元夫婦たちを強制的に「話し合い」の席につかせることだけではないのか、それは大変危険なことではないのか、というのがDVや虐待に詳しい専門家たちの意見である。
誤解が広がった背景には、「(単独親権では)親子が断絶してしまう」「子どもを大人の都合で引き離す」といった、共同親権推進派のミスリードにあたる意見を注釈なくそのまま流したメディアにもあるだろう。
自らもDV家庭に育ったことを明らかにしている福山哲郎議員(立憲民主党)は、「これまでの法制審議会家族法制に関する部会で全会一致でない議決が含まれている要項案を策定、提出したことはありましたか」と問いただし、本質的な理解が深まっていない中での法案成立に憤りを示した。
DVや虐待といった家庭の中の問題は、外側からではわかりづらい。また、その問題の深刻さは実態を目の当たりにした人にしか把握できないものがある。今回の改正は、本当に弱き者の声が聞かれた結果なのか。反対の声はまだ響いている。