束縛から解放されて自由になること。それは決して楽なことではない
山口 友人で、僕の会社の取締役でもある藤沢烈くんは「常にフローで生きたい」と言っています。どんなにお金が手に入る可能性があったとしても、自分は毎日起こる現実を目の前にして、その瞬間を生きたいと。
松本 ご本人にお聞きしてみないとわかりませんが、大筋では僕の考えも似ているかもしれませんね。
僕が気になるのは「自分のキャパシティや出力に対して、100%出し切っているか、120%出すことができたのか」ということに尽きます。瞬間々々の生き方が自分のキャパシティに対して最低100%で、かつ、過去からの累積でも100%を超えているか。その積み重ねが僕の人生の羅針盤なので、世間一般に多いタイプではないかもしれません。
山口 なるほど。
松本 自分は他人にはなれません。他人と比較しても仕方がない。だから、僕は「自分ができたはずのことができていたか」を重視します。相手は他人ではなく自分。端から見ると束縛されていないように見えますが、自分が相手というのは、そんなに楽なことではないですよね。
山口 かつては、社会に従属する人が伸びた時代が続きました。しかし、最近は松本さんのように自分の基準で自由に生きている人ほど成功しているように見えます。お金の流れと同じように、自分の状態やキャパシティを俯瞰して客観化できないと成功は難しいと思うんです。松本さんは、どこに「自分」をどう相対化しているのですか。
松本 いや、別にそんなに遠くにいるわけではないですよ(笑)。
それよりも気になるのは「自由に生きている人ほど成功している」という話です。もちろん、一人ひとりを見るとそういう事例もあると思いますが、現象として増えているのだとしたら、僕はデフレが原因だと思いますね。
右肩上がりのモデルにおいては、成長する大きい組織に入って、その中の階段を昇っていくのが手っ取り早い成功への道です。ところが、デフレで成長のない時代になると、組織に所属していても、昇っていくことができません。成功するには独力で跳び上がるしかない。でも、跳ぼうとしたときに、組織というしがらみが邪魔になって跳べないんですね。それより自由に跳べる状態にある人のほうが上に行けるので、自由な人ほど成功する現象が増えたように見えるんじゃないですか。これから国全体がインフレになって成長できるようになると、再び大組織モデルが復活してくると思いますよ。